平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年3月末まで

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「電脳雑伎集団は、できるだけ早く東京スパイラルの株式を入手したいと思っているはずですが、いまの売り物だけでは買える株数は限られています。相対取引でやるにしても、三分の一以上の株式を買い取る場合は公開買い付けが必要になります。それでいくと、融資は千五百億円でも一度に全額使うのではなく、まず三分の一以下の買い付けが行なわれると考えたほうがいいんじゃないですか」

「それでも株価は相当動くはずだ」

 半沢の指摘に、森山もうなずいた。

「つまり、まだ融資を受けた資金で、株を買いにいってはいないということです」

 森山はそう結論付けた。

「ということだろうな」

 半沢もうなずいた。「とりあえず、後場も引き続きモニタリングしてくれ」

 森山はトレードマークの仏頂面でうなずくと半沢の部屋を出ていく。だが、その後場もなんら動きのないまま、引けた。

「いったい、なんだったんだ……」

 午後三時を過ぎ、自室のモニタで取引の終了画面を眺めていた半沢は、ひとりごちる。
 あるいは、これから開かれる会見で公開買い付けを発表し、全てはそこからはじめるということか。そんなことを考えていると、ケータイが鳴った。

 渡真利だ。

「今日はなにもなかったな」

 半沢はいった。「どういうことなんだ」

「動きはあったさ」

 半沢は、一瞬我が耳を疑った。「なに?」

「動きはあったんだよ」

 もう一度、渡真利は繰り返した。「いま会見で発表があった。電脳雑伎集団が東京スパイラル株の三割弱を買い占めたらしい」

「どうやって?」

 動きを止めた画面を見たまま、半沢は息を呑んだ。

「時間外取引だ」

 まったく予想外のこたえだった。

「時間外取引? 三割近い株を買い取ったというのか」

「まだ詳しいことはわからない」

 渡真利はいった。「だが、はっきりしたこともある。今後、東京スパイラルを傘下におさめるために、過半数の株式を得るための公開買い付けを実施するってよ。おい、きいてるか、半沢」