アイリスオーヤマは開発拠点にこだわりを持つ。「もともとの開発拠点は本社がある宮城県だけ。募集をかけても勤務地が大きく変わることになるため、人が集まらなかった」と同社幹部。そこでパナソニック、旧三洋電機、シャープの各本社からほぼ等距離のところにある大阪・心斎橋に14年、大阪R&Dセンターを開設。東京R&Dセンターも18年、東芝、日立製作所、三菱電機、ソニーの各本社から近い東京・浜松町に開設した。中途採用者に寄り添う姿勢を徹底したのだ。

 家電事業の売上高は約1000億円と、まだまだ大手家電メーカーの背中は遠い。食品事業、BtoB事業などグループ全体で22年度売上高1兆円(19年度5000億円)を狙っており、当然家電事業でもさらなる成長を目論んでいる。

 以下、アイリスオーヤマ関係者へのインタビューを通じて、同社の家電事業の強みを紹介する。

アイリスは給料2/3、開発部員1/5
パナと段違いのコストダウン効果

元パナソニックで元アイリスオーヤマの真野一則さん真野一則さん。1977年に松下電器産業(現パナソニック)入社。家電デザイン、コーポレートデザイン戦略などを担当。2012年早期退職。13年アイリスオーヤマに入社し家電開発部大阪R&Dセンター長など。19年定年退職。現在プロダクトデザイン事務所「用と美デザイン」代表。 Photo by M.T.

――パナソニックからアイリスオーヤマに移って驚いたことは何でしょうか?

 人件費の違いによるコストダウン効果です。だいたい1人当たりの給料がパナソニックの3分の2。さらに開発部門の人員がパナソニックのざっと5分の1。あるプロジェクト開発でパナソニックでは50人かかるところをアイリスオーヤマでは10人で、という感じでしたね。大手は仕事をしない人がいらっしゃる(笑)。一方、アイリスオーヤマにはいません。各人が仕事をしないと回らないからです。

 アイリスオーヤマは中途採用が多いので一人一人のノウハウがすごい。一人一人の責任が重く、領域が広く、その結果、知識は益々広く深くなります。

 会社としての意思決定が速く、「あかんなー」と思ったら止める柔軟性もあります。一番ひっくり返すのは……、大山健太郎会長、大山晃弘社長(笑)。反対に大手は内部で時間をかけて「決定」を積み上げていくので、なかなか後戻りができません。