――卓上IHコンロ対面操作式、両面ホットプレートなど、アイリスオーヤマが「とがった家電」を出せる源泉は何なのでしょうか?

 とがった家電に見えるだけです。大手家電メーカーもユーザー視点に立った機能を搭載した家電は多い。ではなぜアイリスオーヤマの家電がとがって見えるのか。訴求点がシンプルで分かりやすいのです。そして、“値ごろ感”を外さない。

 アイリスオーヤマはマーケットリサーチをしても信じません。最終的には開発者の意欲と経営幹部の勘を大事にします。

 パナソニックにはご飯をおいしく炊くためにでんぷんだけ研究する人とか、お釜の材質を研究する人とか、ノーベル賞受賞の吉野彰さんみたいな人たちがいました。一方、アイリスオーヤマは基礎科学的大発明を狙っていません。「これだったらなんとか開発できるんじゃないの。お客さんも困っているし」といった感じで、ライトな辺りを攻めています。

――大手家電メーカーは同質性競争(機能の横並び競争)に陥っているとよく聞きます。

 スペック表(ダイヤモンド編集部注:大手家電量販店に展示された家電に添えられている「△△機能=○、□□機能=なし」などと書かれた表)分析はアイリスオーヤマもしています。ただし競合他社と比較して足りないところを補うのではなく、全体の傾向として参考にし、極端に負けている機能がないようにしています。

 大手家電メーカーは機能の横並びでも負けないようにしつつ、特長を出す工夫を行っているのに目立たない。それはこのスペック表が原因。だってスペック表は○か×かしか評価はないですから。実際は同じ○でもレベルが違う。特にパナソニックはすごい。アイリスオーヤマはスペック表なら×ばかりでしょうね。でもとがった機能を訴求してお客さんに、「これがほしい」と指名買いしてもらえる家電を世に出しています。加えてアイリスオーヤマの家電には“値ごろ感”があります。