――パナソニックOBとして現在のパナソニックの家電事業をどう見ていますか?
結構頑張って良い商品を提案し続けていると思います。マクロな視点での生活提案はパナソニックのような生活者感覚を持った企業にこそリードしてほしい。何やかんや言って、創業者の理念は社員一人一人のDNAとなっています。
パナソニックは巨大化し、当初の生活家電事業で利益を出せる体制ではなくなっています。特に人件費は膨大で、必要のない業務を切り落としつつも、構造的に今後の伸長は困難。総花的な事業は切り離さざるを得ないでしょう。低価格の家電事業はいずれアイリスオーヤマのような超効率的な運営ができる新興企業、あるいは中国企業に置き換わっていくと思います。
創業者である松下幸之助さんの理念を現代風に読み換えて、生活感ある血の通った商品の開発に取り組むのは、「お客様視点」のパナソニックの使命ではないでしょうか。少なくとも重電系の日立製作所や三菱電機の発想ではできないと思います。
中途採用者が成長エンジン
新卒も大手家電を蹴って選んでくれる
――なぜ積極的に大手家電メーカー経験者を中途採用するのでしょうか。
大型白物家電やテレビの開発は、やはり経験者の知恵が必要です。例えば経験者にはお客様からのクレームの蓄積があるので、どこを起点にものづくりをすればよいか分かっています。
――前職を早期退職した人が多い?
たしかに大手家電メーカーが早期退職募集するので、うちとしてはこれまで採用しやすい環境にありました。早期退職の波が終わってからは「管理職から現場に戻りたい」「自由に開発がしたい」といった人がうちに来ています。家電業界自体に元気がないので、「開発を自由にやらせてもらえない」、「守りの開発環境なのでアイデアを持っているのに社内で通らない」といった状況があるようですね。わが社は外から見ると少しおもしろそうに見えるらしい。ベンチャー企業だと思っている人もいるぐらいです。