――大手家電メーカーとの開発の違いは?

 決裁スピードが断然速いです。大手では5~10個のハンコが必要な書類でも、うちだと1、2個。下手したらオーナーのハンコだけなんてことも。

 任せられる仕事が多いのでやりがいがあります。それは新卒入社でも同じで、だからパナソニックなど大手家電メーカーと併願していても、それらを蹴ってうちを選んでくれる学生がいます。大手家電メーカーだと、開発の一部分しかやらせてもらえない。一方うちは新人でも新製品を「どーん」と任せます。もちろん簡単な製品からですが。

 また大手家電メーカーほど縦割りではありません。例えば、炊飯ジャーの実験の横で空気清浄機の実験をやったりと敢えて実験室を区切りません。関係ないエンジニアが「何やっているの?」と興味を持って話しかけるところから、新しいアイデアは生まれますから。今は所帯が小さいのでできる部分もありますが、今後どんどん大きくなっても風通しの良さにはこだわっていきたい。

――中途採用者の影響で、開発した家電製品が例えば、「東芝っぽい」「パナソニックっぽい」なんてことはないのでしょうか?

 ないですね(笑)。簡単にいうとアイデア出しはプロパーからが多くて、それらの具現化が中途採用者という構図。「日用品を長年やってきたアイリスならではのエンドユーザーに寄り添ったアイデア出し×中途採用者の技術力」で相乗効果を発揮しています。

――アイリスオーヤマの家電は総じて安いと思いますが、価格設定の目安はあるのでしょうか。

 一番は消費者感覚。ものすごく感覚的です。結果としてボトム(低価格帯)からミドルライン(中価格帯)になっています。中国メーカーとの値段的優位性はありません。ただわれわれも中国工場、中国の人件費で作っていますので、中国メーカーと比べて製品が高いわけでもない。むしろ中国では、少し高めに設定して日本ブランドで勝負しています。

 ハイエンド(高価格帯)はありません。われわれのブランドでは売れないだろうというのが事実ですし、消費者感覚で言うと、「ハイエンドは買わないな」とも思いますし。市場にあるハイエンドは余計な機能を付けてハイエンドにしていることが多い。誤解を恐れずに言えば、消費者に嘘をついています。販促のためだけに付けるような機能もありますし。もちろんうちもそういう製品がゼロとは言いませんが、ハイエンドはそういう家電が多すぎます。われわれはあくまで、消費者目線での価格設定と機能設定をしています。