蘇州市にあるかつてはホテルだった建物蘇州市にあるかつてはホテルだった建物。ベイン・キャピタル・クレジットが入手後、アパートに改装された Photo:Raul Ariano for The Wall Street Journal

【蘇州】中国南東部の都市、蘇州の濁った川のそばに、改装されたばかりのアパートが建っている。宣伝によると家具付きで即入居できる部屋が十数戸あるという。

 9カ月前、ここは汚れた衣類や空の食品容器が散乱する廃れたホテルだった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した資料によると、元オーナーは未払いの銀行ローンを残して、数年前に姿を消していた。

 2017年、米投資会社ベイン・キャピタル・クレジットが運営するファンドが介入した。債務不履行(デフォルト)に陥ったローンを買い取り、中国の破産裁判所で手続きを進め、債務を解決したうえで、利益を手にした。アリババグループの通販サイト「淘宝網(タオバオ)」で昨春オークションに出品し、1520万元(約2億4000万円)で売却した。

 ハゲタカ投資家の群れが中国の上空を旋回している。ベイン・キャピタルのほか、ブラックストーン・グループ、ローンスター・ファンズ、オークツリー・キャピタルといった大手投資ファンドだ。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の推定では、世界の投資会社はここ数年、焦げついた中国商業ローンに30億ドル(約3300億円)以上をつぎ込んでいる。

 こうした投資家はディストレスト債権(経営破綻した企業に対する債権)の山を物色し、額面を大幅に割り引いて(大抵は額面の3割~6割)買える企業向け融資を探し出す。投資家の一部によると、不良債権ポートフォリオは、債務返済または転売後のリターンが年率20%を超えることもあるという。

 中国では企業のデフォルトや経営破綻が増加の一途をたどる。企業の借り入れ急増は10年にわたる急速な景気拡大を下支えしたが、このところの景気減速で信用市場はひっ迫し、企業は借り換えが困難になった。これに追い打ちをかけるのが長引く貿易戦争だ。製造業を中心に企業は苦しい状況にある。