平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年6月末まで

>>第1回から読む

3

「たまには飯でもどうだ」

 電脳雑伎集団が東京スパイラル買収計画を発表して数日が経った夜だった。ちょうど帰宅しようと思ったときにフロアから出てきた尾西と森山のふたりを見て、半沢は声をかけた。

 若手たちに、いろいろな不満が渦巻いていることはわかっている。なにかの機会を見つけて意見をききたいという思いもある。

「オレたちも、ちょうど飯食いに行くところだったんで」

 尾西はいい、どうする、という顔で森山を振り返る。

「別に構いませんけど」

 森山の返事でふたりと向かったのは神田にある古い居酒屋だ。

 軽く乾杯した後、話が電脳の時間外取引へと移っていくのに時間はかからなかった。東京中央銀行の買収手法が衝撃的であったことは否定できない事実であった。

「まさか、あんな方法でやってくるとは思いませんでしたね」

 いまいましそうに尾西はいい、ふうと息を吐き出す。「予想外のスキームですよ。だけど、これで電脳は正しかったことになるんじゃないかな」

「どういうことだ」

 半沢は運ばれてきた湯豆腐を口に入れながら、問うた。

「ウチのチームではあんな芸当はほとんど無理でしたから」

 尾西はいった。「頭固い連中ばっかりだし。三木さんがリーダーでは、所詮こんなアイデア出てこないですよ」

「はっきりいうじゃないか」

 半沢はたしなめるでもなく、いった。若手らの三木に対する評価が低いことはわかっている。

「部長も三木さんを認めていたんなら、申し訳ないですけどね」

 案の定、尾西はちくりといい、黙ってきいている森山を一瞥して続けた。「我々としては、こんな大事な案件なんだから、もっと実力重視でチーム編成してほしかったですよ。電脳の担当は森山だったんだから森山でよかったんです。そうすれば、あんな惨めな契約破棄になることもなかっただろうし、こいつなら、今回みたいな奇襲作戦も考え付くかも知れない」