平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年6月末まで

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「瀬名のことは、よく知ってるんで」

「マジかよ」

 尾西が目を丸くし、のけぞるように体を引いた。「どうして知ってるんだ? 大学で一緒だったとか?」
「大学じゃなくて、中学と高校ですよ」

 森山はこたえた。「瀬名洋介は、中高のときの親友だったんです。ヨースケって呼んでた仲ですよ。オヤジさんの都合で転校しちまって、その後は音信不通になっちゃったんですけど、ああして世の中に出てきた」

「マジかよ。だけどさ、親友つっても、何年前の話だよ」

 尾西が呆れていった。「もう人が変わっちまったんじゃないか」

「同じですよ。記者会見、ニュースで見たけど、まったく変わってなかった。向こう気の強い、昔親友だった瀬名洋介、そのまんまですね」

「でもさ、親友なのに音信不通になるなんておかしいんじゃね? 有名人になると友達が増えるっていうけどさ、ホントはお前もその口なんだろ?」

 毒舌の尾西は、森山の矛盾を巧みに突いてみせたが、森山が浮かべたのはなぜか悲しげな表情だった。
「親父さんが株で失敗しちまったんです」

 それをきいてさすがの尾西も神妙な顔になった。

「ヨースケの親父さん、不動産会社に勤めてたと思うんですけど、株の信用取引で大穴開けて、家を売らなきゃいけなくなったんです。オレら、私立に行ってたんですけど、その学費も払えなくなって。そんな事情だったんで、ヨースケとしてもオレやクラスメートたちに連絡を取りづらかったと思うんですよ。カッコ悪いと思ってただろうし」

「瀬名って、結構苦労してるんだな」

 尾西はしんみりした口調になる。「だけど、その親友がさ、あんな形で世の中に出てきたんだから驚いたろ」

「東京スパイラルの瀬名洋介という名前は新聞や雑誌で目にしてたんだけど、最初は同一人物だとは思わなかったんですよ」

 森山はいった。「ところがある日、駅の売店で買った週刊誌を電車で広げたら、そこにでかでかと顔写真が出ていて……。まるで不意打ちを食らったみたいに、あ、ヨースケじゃないかって」