平成の民放テレビドラマ視聴率史上第1位を記録したドラマ「半沢直樹」。「倍返しだ!」で日本中を熱狂させたその続編が、ついに2020年4月スタートのTBS日曜劇場で放映される。

続編ドラマの原作となるのは、池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作品。そこで「半沢直樹イヤー」の幕開けを記念して、「週刊ダイヤモンド」での連載後、2012年に単行本が発売された小説『ロスジェネの逆襲』の3章までを全38回の連載形式で期間限定公開する。*2020年6月末まで

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「郷田社長がおっしゃるには、やはり電脳のやり方はうまくないと。もし、お手伝いできるのであれば、そうしたいということでした」

 広重は説明した。「郷田社長は、瀬名社長のことを非常に高く評価しておいでです。新株を発行されるのであれば、ぜひ引き受けたいとのことでした。いかがでしょうか。決して悪い話ではないと思いますが」

「フォックスがウチの株主になるとして、向こうにビジネス上のどんなメリットがある」瀬名はきいた。

「メリットはそれこそ無限ですよ」

 広重は大げさに両手を広げた。「フォックスが株を持つことによって、いわゆるフォックス・スパイラルというIT連合が結成されることになります。ポータルサイトとパソコン本体の組み合わせに便乗したい企業は無数にあるでしょう。この二社の資本提携は当然のことながら企業価値を高めると思いますので、それだけで株価は上がる。そうなれば、電脳の株取得費用は大幅に嵩むことになり、場合によってはそれだけでも買収を断念させることができるかも知れません」

 瀬名は、こたえる代わりにカップのコーヒーを啜(すす)った。考える間、社長室にしばしの沈黙が訪れる。

 やがて、「なるほど」、という言葉が瀬名から洩れると、場にほっとした空気が漂った。

「どうすればいい?」

 今後のスケジュールを瀬名は問うた。

「まず、御社で、新株の発行を決議していただきたい」

 広重がいった。「後は、実際にそれを発行し、フォックスに購入してもらうだけです。早ければ早いほどいいでしょう。電脳雑伎集団の公開買い付けを挫くためにも、少しでも早く発表するのが得策かと」

「デメリットは?」

 その瀬名の言葉は、前のめりになっていた太洋証券のふたりを押し黙らせた。

「デメリット、ないしはリスクがあるんじゃないのか」

 瀬名はきいた。

「私どもで点検したところ、このスキーム自体のデメリットもリスクもありません」

 二村が断言した。

 だが、これには瀬名は返事をしなかった。