新型肺炎リスクが浮上する為替市場、SARS流行時と比べる「深刻度」新型肺炎の感染拡大リスクが高まった27日、為替市場ではドル円が一時108円台に下落した。SARS流行時と比べたリスクはどれほどか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型肺炎が世界中に拡大
金融市場の新たなリスクへ

 2019年末頃に中国湖北省武漢市で発生した新型肺炎は、20年に入り感染者数や死亡者数の増加が散発的に報道されていた時点では、金融市場で大きく材料視されなかった。しかし、1月21日に厳重な感染予防対策を取っていたはずの医療関係者15人の感染例が報告され、香港大学の研究チームが「感染者は武漢市だけで約1300人に上っている」との推計値が発表されると、人から人への感染懸念が一気に高まり、新型肺炎は市場の新たなリスク要因に浮上した。

 21日以降、新型肺炎の感染拡大が市場の焦点となると、上海や香港市場を中心にアジア株は大きく下落し、世界景気の減速懸念から銅などの資源価格も下落した。為替市場では、人民元や韓国ウォンなどのアジア通貨、豪ドルなどの資源国通貨が比較的大きく下落する一方、リスク回避姿勢の高まりから円高圧力が強まっている。ドル円は1月17日に110.29円まで上昇したが、新型肺炎の感染拡大懸念が高まると、27日には一時108円台に下落した。

SARS流行時との比較
当時はアジア株・通貨が大きく下落

 今回の新型肺炎の感染拡大について、市場では02年11月から03年7月にかけて香港からアジアを中心に感染が拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)との類似性が想起されやすい。SARSによる被害は、感染発覚から03年7月5日の世界保健機関(WHO)による封じ込め成功の発表まで約8カ月の間に、感染者が37カ国で8096人、死亡者は774人だったとされる。一方、今回の新型肺炎では、中国国内だけで2744人の感染、80人の死亡が1月27日までに確認されている。