「『20の私』テスト」が暴く
「自分というもの」への認識

 心理学の実験の中でも最もシンプルなものに「『20の私』テスト」というものがある。

 これは、「私は○○だ」という文章を思いつくままに20個書いてもらうというものだ。テストといっても正解があるわけではない。

 たとえば、皆さんならばどのように回答するだろうか。

 多くの人が思い浮かぶのは、「私はサラリーマンです」「私は○○社の営業です」など、自分の所属カテゴリではないかと思う。

 しかし、このテストを(アジア系ではなく欧州系の)アメリカ人に行なうと、少し違った結果になることが知られている。

 彼らが最初にする回答は「私は有能だ」「私は社交性がある」「私は情熱的だ」という「個性」であることが多いのだ。

 もちろん、どちらの国でも個人差はあるので、このパターンに当てはまらない場合も多い。さらに様々な追試で、色々な場面の中でこのテストをやると、回答が変わることもわかっている。

 しかし、どんな場面かを特定せず、まったく白紙の状態で「20の私」テストを行なうと、日米で上記のような違いが出やすいことは、確実にわかっている。

 文化心理学という分野では、この違いを東洋と西洋の「自己観の違い」が原因だと説明している。「自己観」とは「自分がどんな存在か」についての見方で、これが文化によって異なっているというのが文化心理学の考え方だ。

 西洋、特に北米での自己観は、他の人とは違った何かユニークなものが主流で、個性や他人とは違っている自分の特徴をもって自己を認識することが多い。したがって、「『20の私』テスト」でも、まずは自分個人の特徴を述べる。このような自己を「相互独立的自己」と呼ぶ。