前回、短期証券投資の形で、イギリスから日本へ巨額の資金流入が2011年にあったことを述べた。

 これは、世界的な資金の流れが「リスクオフ」の方向を向いていることの反映である。「安全」と考えられている投資対象としては、日本国債の他にアメリカ国債がある。

 以下においては、アメリカへの資金流入、ヨーロッパからの資金流出の状況を見た後、「リスクオフ」の流れがいつまで(あるいはいかなる条件変化があるまで)続くのかを考えることとしよう。

2011年に増加した
アメリカ対外純負債

 アメリカは1986年以降、対外負債(外国人がアメリカに保有する資産)が対外資産(アメリカ人が外国に保有する資産)を超え、純債務国になっている。

 2008年には、純資産額は、マイナス3.2兆ドルであった。09年、10年にはこれがマイナス2兆ドル台になったが、11年にマイナス4兆ドルになった。

 リーマンショックまでの時点では、経常収支赤字をファイナンスするために巨額の資本流入があった。08年と09年は、QE1、QE2の影響でアメリカから資本が流出したのだろう。10年頃からは、ヨーロッパ金融危機の影響で資金がヨーロッパから逃避し、アメリカに流入しているのだと考えられる。

 ところで、対外資産・負債の変化は、資金流出入に起因するものと、評価変化に起因するものとがある。したがって、資金流出入を見るには、対外純資産の変化をこれら2つの要因に分解する必要がある。11年についてこれを行なったのが、[図表1]だ。

世界金融市場の「リスクオフ」はいつまで続くのか?