徳力  「READYFOR」の場合、例えば、地方在住で普段からソーシャルメディアに接していないユーザーもいますよね。そうした方にも、その説明で理解してもらえますか。

米良  なかには理解していただけない人もいます。

徳力  個人的には、そこに企業のマーケティングにとってのヒントがあると思っているんです。従来のマーケティングは、企業が広告を通して、言わばスピーカー的に一方的に情報を発信して、それを受けとった消費者の一部に商品・サービスを購入してもらおうという流れが中心だったと思います。企業側が強いですよね。

 しかし、クラウドファンディングは、どちらかと言うと、プロジェクト実行者側がその想いと共に「助けてください」と訴えて、支援者側から手を差し伸べてもらうコミュニケーションになると思います。そこに意識の違いがあって、大企業が従来の価値観のままクラウドファンディングを利用しても上手くいかないように思います。

米良はるか氏 代表取締役CEO(最高経営責任者) 1987年生まれ。2010年慶応義塾大学経済学部卒業、12年同大学院メディアデザイン研究科修了。大学院時代にスタンフォード大学に短期留学し、帰国後11年に日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を立ち上げ、2014年「READYFOR(レディーフォー)」として株式会社化、代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任。 提供:Agenda note

米良  そこは応援という文脈が強いことを説明して、「こんな課題があって、その問題解決を一緒にしよう」というコミュニケーションを推奨しています。そうすると、支援した人から「こんなプロジェクトを始めてくれて、本当にありがとう」といったコメントが寄せられるんです。

 例えば、コニカミノルタさんは、女性の月経(生理)がはじまる前の数日間(3~10日)から起こる心身の不調を起こす症状「月経前症候群(Premenstrual Syndrome)」の改善に向けたセルフモニタリングツールのクラウドファンディングを実施して、プロジェクトを成立させています。

コニカミノルタ「月経前症候群(Premenstrual Syndrome)」に向けたセルフモニタリングツール「Monicia」。  提供:Agenda note

 一方で、「こんなイノベーティブな商品が生まれました!」とユーザーの期待を煽るようなコミュニケーションは、あまり勧めていません。というのも、期待値を下手に上げてしまうと、それを上回るものを提供することが難しく、持続的な支援にならないからです。

徳力  従来、大企業は、「うちの会社の高い技術力から生まれた完ぺきな商品を買ってください」というコミュニケーションに慣れていますよね。そこからすると、ある意味、クラウドファンディングは、弱みをさらしているように見えて、広報部門に怒られてしまいそうです。戸惑う担当者の方も多いのではないでしょうか。

米良  大企業でも新規事業や先進的な取り組みをされている柔軟な方がフロントに立たれる場合が多いので、そこまで戸惑いはないかもしれません。

徳力  そういう人でないと、そもそもプロジェクトをしないということですね。

米良  どちらかと言うと弱みというよりも、企業や商品が目指している世界を発信して、そこに共感してくれる人を味方につけて製品をつくっていくという発想です。

徳力  そこが、すごく面白いですよね。先日、マーケティングカンファレンスの「マーケティングアジェンダ」で元P&Gのジム・ステンゲルさんがブランドパーパスの大事さを講演していました。

 ブランドパーパスは、ブランドの存在意義。まさに米良さんが言うように、ブランドとして目指している姿を発信していくことが重要なんですよね。

米良  そうです。まさに大事なのは、パーパスです。企業は、パーパスがあるからチャレンジしているわけです。その結果、参加した人がその企業に愛着を持つようになります。

徳力  どんな製品でも理想を目指して常に変化していくものなのだから、むしろ100%完璧な状態ではないのが当たり前ですよね。それなのに、企業はこれまで「現在の製品が完璧だから、いまこの瞬間に買ってください」と言っていた印象があります。

病気をきっかけに「支援」することの意味を考えた

米良  少し違う話になるかもしれないのですが、現代は「家族」や「会社」といったこれまで絶対的な存在だったコミュニティがなくなっているように思います。特に終身雇用がなくなって突然、あなたのコミュニティは、あなたが決めるもの、という状況になっています。

 そのなかで、私たちの世代は「自分が貢献できるところは、どこだろう」と探し求めていますし、上の世代も同じように思い始めています。だからこそ、応援を必要としている人に対するコミュニティも成立しやすくなっています。