この時点で「もうだめだ」とすべてを諦めてしまうことは時期尚早です。厚生労働省、地方自治体は、現在これらの「ルートの特定が難しい感染伝播の鎖」を調査によって解きほぐし、濃厚接触者を探し出そうとしています。そして、彼らの発症を早期に探知し、そこからの新たな感染伝播鎖を防ごうとしているのです。

 地域に広がるというのは、ウイルスの性質によるところが大きいので、残念ながらこれを完全に防止することは難しいと思います。しかし、感染の拡大を少しでも遅らせることによって、可能な限り日本における被害を少なくすることができるのです。この方法については、行政機関のみならず、国民全体で考えていかなければいけません。

 状況によっては、不特定多数の人が集まる場所、学校や事業所での感染拡大防止対策をとることも必要になるでしょう。また、大量の疑い例、しかも軽症の人たちが一度に病院に殺到すれば、医療機関は破綻し、本当に治療の必要な重症者の治療さえできなくなってしまうかもしれません。今後は、軽症であれば、指定医療機関だけではなく、いろいろな医療機関で診療し、軽症であれば自宅で養生をし、重症になれば指定医療機関で入院治療を行うというように、医療体制全体を整備していくことを考えるべきです。現在は、地域で今後の状況を見据えて、対応を考えていかねばならない時期なのです。

 しかし、われわれ個人ができることは変わりません。季節性インフルエンザと同様の対策、つまり、日常的な手洗い、状況に応じたマスクの着用、咳エチケット、特に高齢の方や基礎疾患(高血圧・糖尿病などの持病)のある方は人混みを避けること。これらの「基本の感染症対策」を続けることが大切です。

感染しやすい場所はどこ?

 学校や職場、満員電車、劇場などの娯楽施設といった、不特定多数の人が多く集まり、言葉を交わすような場所が考えられます。感染経路は、「飛沫感染」と「接触感染」の2つがあります。

<飛沫感染>
 感染者のくしゃみ、咳、つばなどと一緒にウイルスが放出され、そのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染します。

※主な感染場所:学校や劇場、満員電車などの人が多く集まる場所。もちろん、これには一般的な家庭、高齢者施設や医療機関も含まれます。

<接触感染>
 感染者がくしゃみや咳を押さえた手で物に触れるとウイルスが付きます。ほかの人が同じ物を触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って感染します。

※主な感染場所:つり革や手すり、ドアノブ、スイッチなど。

 上記2つの感染経路が重なる場所が感染しやすいと考えられます。たとえば、電車やバスは多くの人が乗り、接触するつり革や手すりがあるので注意が必要です。乗った後は手洗いやアルコール消毒をこまめに行うこと、既往症があったり体力が弱っていたりする高齢者は必要以上に乗ることを避けるべきでしょう。