伝える!震わす!書く力。12

数々の名作キャッチコピーを世に生み出してきた糸井重里氏。2020年3月1日(日)まで全12回でお届けする特集「伝える!震わす!書く力。」の最終回は、つねに「ことば」や「文章」と向き合ってきた糸井氏に、「書くことを楽しむコツ」や「コミュニケーション上の齟齬やギャップ」について語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 撮影/栗栖誠紀)

「週刊ダイヤモンド」2019年12月21日号の第1特集を基に再編集。肩書や数字など情報は雑誌掲載時のもの

――「書くこと」が苦手と思っている人は多いと思います。メールであれば、文章力や表現力への苦手意識だったり、紙であれば、字が下手で文字を書くこと自体が嫌いだったり。そうした人が書くことを楽しめるようになるコツはありますか。

 まずは文章を書くということを意識しなくていいのではないでしょうか。手帳などに単語をカタコトで書いたり。それなら得意も苦手もないから。たとえば外国に行ったときに、カタコトのことばで成り立ったりするじゃないですか。あれに近いことは書く文章にもあると思う。メモを書いていくうちにだんだんと違うことが見えてきた、書く習慣が身についてきた、ということはよくあります。

 書くことにずうずうしくなればいいんじゃないでしょうか。表現は全部、ずうずうしさがないとダメですよね。カラオケなんかは案外みんな、ずうずうしく歌いますよね。昔はカラオケであまり歌わなかったんですよ、みんな。歌う人が珍しいくらいで。「いいよいいよ」とか言いながら何とかごまかして歌わない人は山ほどいた。でも、一回歌うと気持ち良くなるんですよね。カラオケは明らかに文化を変えた。誰もが人前で表現するようになった。それと文章を書くことも同じじゃないかなあ。