今年5月17日、シティバンクが開催した株主総会で、取締役会が出した役員への高額報酬案が否決されたことは記憶に新しい。この総会議案では、バンディットCEOに対しては1500万ドル(約12億円)の報酬や、4000万ドル(約32億円)相当の慰留プランが提案されていたといい、この否決を受けて、同行取締役会は今後の対応を協議中としている。

 もちろん、この動きの情緒的な背景としては、「ウォール街を占拠せよ」に代表される格差社会への批判もあったであろうが、議決権行使助言会社のISSや年金基金などの大株主も歩調を合わせたと言われているだけに、銀行幹部の高額報酬に対する批判はこれからも続くと思われる。

 ところで、今般の株主総会決議は、連載第3回で詳述した米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)の951条に規定されたもので、CEO、CFO、及びその他高額の所得を受けている3名を対象に、定期的にその報酬の承認決議を求めているのだ。世界的に”Say-on-pay”とも言われているものである。

 今回は、金融機関、特に銀行の高額報酬を巡る世界的な規制の方向性と、その論点について考えてみたい。

銀行の高額報酬規制
英国で始まり世界的議論へ

 銀行の高額報酬規制は、09年9月のG20で議論された後、同年11月、英国で発表された金融機関改革の報告書が「金融機関の従業員が目先の収益に貢献しても将来は損失を蒙るような高リスクの投融資に傾斜したことが08年の金融危機の引き金になった」との見方を示し、この報告書を受けて英財務省が賞与を長期の収益に連動させ、その一定以上を数年にわたって繰り延べることや、年収が100万ポンド(約1億2000万円)以上の従業員数を開示させることなどを柱とする報酬規制を、2010年度から導入すると発表したことに端を発する。