新型肺炎新型肺炎による日本経済への影響とは? Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

新型肺炎が日本経済に与える影響には、「生産の減少」「国内需要の減少」「中国経済の落ち込み」という3つの経路が考えられる。これらから考えて、景気の後退は免れないだろうが、その先の日本経済はどれだけ悪化する可能性があるのか。(塚崎公義)

「生産の減少」「中国人旅行客の減少」の影響は意外と小さい

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。今後どこまで感染が拡大するのか見通せない中で、景気への影響を論じるのは難しいが、本稿では「外国でも国内でも広がりは限定的で、騒ぎは数カ月でおおむね沈静化する」という仮定に基づいて考えてみたい。

 ご存じのように中国では新型肺炎が猛威を振るっている。中国企業は生産活動を例年の春節以上の長期にわたって休止し、その後も本格的な生産活動に戻れていない工場も多いようだ。

 経済はグローバル化しており、中国製の部品を生産に用いている日本企業も多いので、部品が入手できないと生産が止まってしまう日本国内の工場もあるという。

 こうした現象は、簡単に目で見えるので、マスコミが取材して記事にすることが容易である。「生産がこれだけ落ち込んだから、GDPがどれだけ落ち込むだろう」といった計算も簡単だ。

 しかし、実のところ、生産の減少が世界経済に与える影響は限定的だ。今月満たされなかった需要は来月の増産によって満たされるはずだからである。

 日本で生産できない分が、世界の他の地域で生産されたものの輸入によって代替されれば(そうなれば日本経済には打撃だが)、世界経済への打撃は限定的だろう。

 したがって、世界の株式市場が意外なほど冷静なのは、「新型肺炎騒ぎが落ち着けば、生産が戻り、満たされなかった需要がフル生産で取り戻される」と考えてのものだとすれば、合理的なのかもしれない。