感染した人のほとんどが、武漢やその周辺への渡航歴があった。中国では、2100人超の死者、7万4000人超の感染者のうち、大半がこの地域から出ている。そしてこれは、CDCの発表で今季1万4000人を数えた米国のインフルエンザ死者数と比べれば大幅に少ない。

 新型コロナウイルスを巡る差別は、科学的事実や人種偏見に基づいたものではなく、感染症に対する「生理的嫌悪感」からくるもののようだと、バンダービルト大で政治学を教えるシンディ・カム教授は言う。

 エボラウイルスやジカ熱の発生を調べたカム氏は、感染症への恐怖心は、誰が実際に感染しているかの考察よりも大きいことが分かったと話す。

 中国に住む米国人マット・ギャラトさんは、今月米国に帰国し、家族と自主的に2週間の「検疫期間」に入ることをインターネット上で明らかにした。すると、ユーチューブチャンネルのフォロワーから、予期せぬ反応が返ってきたという。

「自分たちの国全体に感染を広げている。出ていけ、と言われた」と、ギャラトさんは話す。

 こうした体験談が広がるにつれ、現在も検疫中の人々は先行きに不安を募らせている。注目を集めることを恐れ、取材に応じたくないという人も複数いた。

「ソーシャルメディアで発言してきたから、外に出た時に私のことを知っている人も多いだろう」

 ダイヤモンド・プリンセスから退避してカリフォルニア州の空軍基地で検疫を受けているサラ・アラナさん(52)はこう話し、「潜在的にウイルスに感染しているとみなされないことを願っている」と付け加えた。

 前出のティビカさんは、偏見の背後には無知があると言う。

「(検疫という)正しいことをしている人を、罰さないでほしい」

(Andrew Hay and Brad Brooks)

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