名前を変えただけで、まったく人気のなかった商品が、突然爆発的に売れるようになったりすることがある。それはもちろん日本だけではなく、世界共通の現象だ。
ダイヤモンド社より『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』を刊行したコピーライターの阿部広太郎氏が紹介する珠玉のエピソード第2弾。
そう、人は言葉だけでかっこよくなれる。

オリンピックのボランティアが<br />突然かっこよくなった秘密<br />Photo: Adobe Stock

本来の意味が失われつつある
「ボランティア」

2020年、東京五輪が開催される。
2013年に開催地が東京に決定してから今に至るまでの連日のニュース報道を見ていて、単なるスポーツの大会ではないということを肌で感じている。
これはお祭りなのだ。
組織委員会は、どれだけの人を巻き込めるかを日々考え続けているのだと思う。どの国のどの都市で開催するにしても、当事者意識を広めるためには何よりも言葉が重要なのだという事例を紹介したい。

これは、2012年。ロンドン五輪の話だ。
開催するためには、大会事務局と連携をし、選手の支援、会場運営、医療関係などの運営に携わるボランティアの協力が必要になる。

「五輪のボランティア募集!」

そう銘打った広告があったとした時、あなたはどう思うだろうか?
五輪に強い関心がある人であれば応募しなくちゃ、と思うだろうし、「うーん、ボランティアかあ…」と気にはなるけど、どうするか決めかねる人も多いのではないかと思う。
「ボランティア」は、「自分から進んで社会活動などに無償で参加する人」を意味する。そもそも語源は、ラテン語の「volo」(ウォロ)から来ている。
これは「自分から進んで~する」「喜んで~する」の意味で、本来であれば「主体性」が意味の真ん中にある言葉だ。言葉の意味合いは時代によって変化していく。
昨今では、「ボランティア=無償でやる」の部分に意味が引っ張られて、そこに主体性はマストであるはずなのに、「みんなでボランティアをしよう」という、本末転倒の使われ方もされている。