昔ながらの
路地裏コミュニティも健在

 コミュニティは「仕掛け」がなければ成り立たないかといえば、そんなことはない。昔ながらの井戸端や路地裏も健在だ。

 東京都大田区、東急池上線「御嶽山」駅から商店街を抜けた先に、こぢんまりした家が6戸、並んで建っている。住んでいるのはすべて、子育て中の家族。ここでは子どもたちが仲よくなったのをきっかけに、小さなコミュニティが自然と形成された。

 昨年、3人目の子どもが生まれて5人家族となったEさん一家は、以前は賃貸マンションに住んでいた。そこでは階下の住民から子どもが出す音がうるさいと言われており、小さくてもいいから次は戸建てに住みたいと希望していた。

 Eさんには、地元工務店が開発した建築条件付きの、この分譲地を見つけたときに、価格や広さと並んで重視した点があった。「同じ区画に住むご家族の年代と構成です。うちと同じような方たちばかりだったのが、購入の決め手になりました」(Eさん)

 お向かいに住むIさん一家は、2人の男の子を持つ4人家族。最初の見学時には、新幹線が近くを走る立地が気になり、購入意欲は薄かった。しかしその後、区画内に完成済み物件があると聞き、あらためて見学に行ったところ「大きいクルマを止めやすい、物置を設置できるスペースもあるなど、更地のときには見えなかったメリットが見えてきました」(Iさん)

 入居後、IさんとEさんを含む6家庭で、家族ぐるみの交流が始まった。この区画には、6戸中5戸が囲む敷地内道路がある。この私道を「広場」として、子どもたちが遊び始めた。各家庭の玄関を開けた目の前だから、子どもたちにとっては庭感覚で、親の目も届きやすい。住民以外のクルマが区画内に入ってくることもないため安全だ。

 コミュニティの主役は子どもたち。話を聞いている最中も、小学生の男の子が、一緒に遊んでいる子どもたちのために水を入れたカップとお菓子を盆に載せて運んでいた。家の内と外の区別がまるでないのだ。「いつもこんな感じなんですよ」とEさん。こうした風景を懐かしく感じる大人も多いことだろう。

 すっかり仲よくなった6家族は交流を深める中で、私道「広場」を使って、子ども用プールでの水遊びや花火大会、お月見といったイベントを開催した。それらの発案・企画は、すべて子どもたちで、大人と一緒にチラシも作成した。

 子どもが大きくなれば、付き合いも変わっていくだろうが「子どもにとって大事な10年間を過ごすには理想的な環境です。このような環境を意図的につくることは難しいでしょうが、私たちは偶然にも得ることができた。これは本当に幸せなことだと思います」(Eさん)