企業買収で検討すべき3つの視点

 最後に、企業買収の高まりである。日本の企業買収は年々加速しており、クロスボーダーのM&Aも増加傾向にある。しかし、先に述べたようにM&Aは本質的にアドバース・セレクション問題を伴い、しかもクロスボーダーならその問題は深刻化する。2014年に第一三共が(2008年に買収した)インドの製薬企業のランバクシー・ラボラトリーズを売却した件や、2014年にLIXILが買収したドイツの水栓金具大手グローエの中国系子会社に、後になって不正会計が発覚して大きな問題になった件などは、その代表例である。

 企業買収におけるアドバース・セレクションの対処法については、経営学で実証研究が蓄積しつつある。同分野の第一人者である米国のパデュー大学のジェフリー・ロイヤーが2004年に『スローン・マネジメント・レビュー』に掲載した実務家向けの論考では、過去の学術研究の知見をまとめて、買収する側の企業が検討すべき3つの視点をまとめている(図表3を参照)。

(図表3)拡大画像表示

※1)Capron, L. & Shen, Jung-Chin. 2007. “Acquisitions of Private vs. Public Firms: Private Information, Target Selection, and Acquirer Returns,”Strategic Management Journal, Vol.28, pp.891-911. および図表2参照。

※2)Dikova,D. et al., 2010.“Cross-border Acquisition Abandonment and Completion: The Effect of Institutional Differences and Organizational Learning in the International Business Service Industry, 1981-2001,” Journal of International Business Studies, Vol.41, pp.223-245. および図表2参照。