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新型コロナウイルスの感染拡大が収束する兆しは見えない。日本への打撃はインバウンド需要に依存する「観光」業界やサプライチェーン寸断に直面している「自動車」業界などに限られるとみられがちだが、実は違う。コロナ問題が長期化するにつれて、国内産業への負の影響が増幅しつつある。特集『倒産連鎖危機』の#5では、コロナショックが直撃する「国内12業種」について取り上げる。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子) 

日産の下請け企業が大ピンチ
経営迷走にコロナが追い打ち

 福岡労働局やその出先機関である北九州雇用調整助成金(雇調金)臨時窓口に、日産自動車グループの下請け企業が殺到している。

 福岡労働局の担当者は「車両の運搬事業者、工場へ派遣労働者を供給する人材サービス会社など日産グループの取引先12〜13社が雇調金(従業員を解雇せずに休業などの形で雇用を継続した場合に休業手当・賃金の一部を補助する制度)を申請するべきなのかどうかの相談に来ている」と言う。

 すでに政府は、新型コロナウイルスの影響で事業縮小が迫られる企業に対して雇調金の支給要件を大幅に緩和する方針を示している。その恩恵にあずかろうと、下請け企業の経営者はわらにもすがる気持ちで労働局を訪れていたようだ。

 日産グループの主力の生産拠点である日産自動車九州(福岡県苅田町)では、中国製部品の納入が滞るサプライチェーン(部品供給網)の寸断を理由に、生産調整を実施してきた。まさしくコロナショックが直撃した形だが、下請け企業を苦しめている要因はそればかりではない。

 カルロス・ゴーン元日産会長が失脚して以降、日産の経営は混乱の極みにある。経営上層部と同様にサプライヤー(自動車部品メーカー)など下請け企業を束ねる日産の購買部門もまた機能不全に陥っている。そのため厚生労働省関係者は「昨秋あたりから、日産の迷走で業績が悪化していた下請け先企業の中に、今回の生産調整で危機的状況に追い込まれた事例があった」と言う。

 あくまでもコロナは危機に陥れる“導火線”の役割を担っただけで、一部の下請け企業はもとより根本的な経営課題を抱えていたということになる。

 帝国データバンクによれば、日産自動車グループの下請け先企業は全国に約1万6000社ある。三大都市圏に加えて主力工場のある神奈川県や福岡県に集積しており、その大半が中小規模の企業ばかりだ。コロナショックのような突然の危機は、元々経営体力の乏しかった中小企業を崖から突き落としかねない。自動車産業は裾野が広いだけに、こうした危機がグループ内で連鎖する懸念も高まっている。

 コロナの感染拡大が終息する兆しは見えない。問題が長期化するにしたがって、打撃を受ける国内企業の「業種」に広がりが生じるようになっている。

 インバウンド需要に依存する「観光」業界やサプライチェーン(部品供給網)の寸断に直面している「自動車」業界だけではなく、「国内12業種」に危機がひたひたと迫っている。