株式レポート
8月15日 18時0分
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第1四半期決算を踏まえた日本株のバリュエーション - 広木隆「ストラテジーレポート」

上場企業の12年4-6月期決算が出揃った。市況悪化で素材系の不振が目立ったほか、欧州危機や中国景気の減速で機械、精密、電機の一部が通期の業績予想を下方修正した。その結果、東証1部3月決算企業の今期経常利益はやや伸びが鈍るものの、前年比で概ね2割増益の見通しはほぼ変わっていない。

日経新聞によれば、「6月以降、製造業を中心に79社(金融・電力など除く)が通期の経常利益予想を下方修正した結果、全体の経常増益率の見通しは、期初段階の22%から現時点で18%に下振れした」という。しかし、22%増益が18%増益になったのは、確かに「下振れ」には違いないが、「概ね2割増益」の範囲内ではないか。筆者の手元の集計では、19%増益、日経の集計とほぼ同じ結果だ。これは会社側発表の数字だが、Quickコンセンサスで市場のアナリストの動向を見ると、東証1部(除く金融)経常増益率の見通しは22%増益である。IFISジャパンのアナリスト・コンセンサスでも21%増益とほぼ同じ結果になっている。IFISジャパンのアナリスト・コンセンサスで決算発表が始まる前の7月上旬の経常利益増益率を見ると25%強。直近では21%増益だから、約4%強の下方修正となっており、日経報道にある会社側予想の下方修正に沿った格好となっている。



これらを総合すれば、今期の経常利益の増益率は期初の予想より4%強下方修正されたが、依然として「概ね2割増益の見通し」と言えるだろう。

日経平均をひとつの「会社」と見立てて、予想1株当たり利益(EPS)を、株価÷予想PER(株価収益率)で求めると先週末(8月10日)時点で740円である。決算発表が始まる前の7月上旬には765円だったから、この1カ月で約3%下方修正されただけである。伸び率に直すと、前期のEPSは448円だったから、7月上旬時点では71%増益、先週末で65%増益。これはIFISジャパンが集計しているアナリスト・コンセンサスの当期利益の増益率にほぼ等しい。日経平均採用銘柄とIFISジャパンのカバレッジの違いを考慮すれば、よくもここまで近い数字になったと思うほどだ。

こうしたチェック・プロセスを経て、日経平均の予想EPSは、ほぼ市場の予想を織り込んだ数値と捉えてよいだろう。

株価が、企業業績の見通しと、それに対する市場の評価(バリュエーション)、すなわち予想EPS×PERで表されるとすれば、予想利益が変わらなくてもバリュエーションが高まれば株価は上昇する。今後、欧州債務問題に進展が見られたり、世界景気に対する過度な不安が後退すれば、歴史的な低水準にある日本株のPERには上昇の余地があるだろう。振り返れば、日経平均が8100円台まで売られ、悲観の極みにあった昨年11月でさえPERは14倍弱(13.7倍)だった。その水準まで戻らないほうが不思議である。14倍弱まで戻れば日経平均は1万円の大台を回復する(740円×13.7倍=10,138円)。下方修正された現在の予想業績でも、外部環境の変化等による市場心理の改善だけで日経平均1万円台は十分射程距離にあることを念頭に置きたい。

注意したい点は昨年の安値8100円台をつけた11月よりも、その前のほうがPERが低かったことである。昨年9月26日には12.6倍まで低下していた。その時点の日経平均は8374円だから、EPSは665円。最安値8160円をつけた11月25日のPERは13.7倍だから、EPSは595円。株価が下落してもPERが上昇したわけは業績見通しが下方修正されたためである。665円→595円、実に10%強の下方修正である。IFISジャパンのデータで当時の経常利益予想の推移を見ると、11年7-9月決算発表が始まる前の10月上旬に上場企業全体で約20兆円の予想が、決算発表一巡後には約18兆円へと、10%下方修正されている(グラフ1は下方修正が顕著だった製造業の経常利益を示している)。



昨年11月、日経平均が8160円まで売られた背景は、欧州債務危機が深刻化するなか、日本企業の業績見通しも悪化していたからにほかならない。逆に見れば、そうした劣悪な投資環境のなかでも、市場は14倍弱までのPER上昇を許容した、とも言える。その状況と比べれば、現在は業績見通し、外部環境とも、はるかに「まし」ではないか。

主要国での一段の金融緩和期待、米国経済復調の兆しなど市場心理改善の材料は多い。前述の通り、昨年秋並みの14倍弱までのバリュエーション上昇は十分あり得ると考える。

米国経済復調の兆しと言うのは、今月に入って良好な経済指標の発表が続いていることを指す。昨日発表された7月の小売売上高も市場予想を上回り、4カ月ぶりの高い伸びとなった。米国景気は春から夏にかけて弱含み、年後半持ち直すという例年通りのパターンである。ドル円の下値が明確に堅くなってきていることも注目されたい。




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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