帝国航空の業績悪化が報道される一方で、同社社員の並外れた厚遇ぶりも知られるところとなって、世論は冷ややかだ。血税での救済は国民の誰もが納得しないだろうし、そんなことをすれば、ただでさえ低空飛行の憲民党政権の支持率は地に墜ちる。近い将来行われるであろう総選挙でのマイナス要因になることは確実だ。

「当然のことだが、ウチとしてもいま帝国航空に倒産されては困る。先日、政府主導で経営改善のための有識者会議が発足したばかりだ。それは知っているか」

「新聞で読みましたから」

 と半沢。「ですが、今ひとつ有識者会議の性格付けがわかりません」

「お飾りだよ、あんなものは」

 内藤は切り捨てた。「学者や財界の有名人が集まって、ああでもないこうでもないといったところで、具体的に計画を作るだけの労を執る者はいない。これから着手する修正再建案は、実務レベルで作成し、最終的にその有識者会議のお墨付きを得て、正式な計画として発表されることになる。今度こそ、生ぬるい計画案は排さねばならない」

「もし、修正再建案が不調に終わった場合は?」

 そろりと、半沢はきいた。

「そのときは」

 内藤は、すっと息を呑んだ。「帝国航空は破綻する。もちろん、我々の債権の大部分は、回収不能になるだろう。当行の業績、並びに財務への打撃は深刻だ」

 内藤は、普段は冷静な仮面の下に隠している熱い本性を覗かせた。「頭取は、この難局を君に託された。諸々の事情はあるが、それをいったらキリがない。肝心なことはただひとつ。ここを確実に乗り切れるのは半沢、君しかいないということだ」

 いままた、半沢は長い吐息を洩らした。

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