TBSドラマ「半沢直樹」の原作『銀翼のイカロス』限定公開!
前作のメインキャストに加え、フレッシュな新メンバーの出演で話題沸騰!日本全国に「倍返し!」旋風を巻き起こしたあの怪物ドラマ「半沢直樹」がいよいよ帰ってくる!原作は、「週刊ダイヤモンド」で連載された池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作。読者からの人気記事投票で1位となるなど、連載当時からビジネスパーソンに圧倒的な人気を誇っていた。そこでドラマ放映を記念して、『銀翼のイカロス』序章から2章までを期間限定で特別公開する。*2020年9月末まで

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「これなんですけどね」

 帝国航空の応接室で、山久が差し出したのは一通の書類だった。

 再生タスクフォースが策定している再建案の一部で、全十五ページ。主に、減便と撤退路線に関するもののコピーだ。

「午後に運航本部の担当者が呼ばれて、この内容で行きたいからと、細かい数字の正誤を確認するよう命じられたんです。外には洩らさないでくれといわれたらしいんで、内密にお願いします」

 いま、山久たち帝国航空従業員の、タスクフォースに対する反発は相当なものだ。

 当初こそ、半沢に頑なな態度を見せていた山久だったが、タスクフォースという共通の敵の出現もあってか、この三カ月で随分、友好的な関係になっていた。微妙な力関係のなせる業としかいいようがない。

「見てください、半沢さん。有識者会議と煮詰めた修正再建案を白紙撤回だなんだっていってますが、減便や撤退路線は、ほとんどそのままなんですよ。なにも目新しいものなんかありゃしません。国交大臣の自己満足のために、あんな横柄な連中を、しかもコストはこっち持ちで送り込んでくるんだから、迷惑以外の何物でもないですよ」

 タスクフォースの人件費は、専門家集団だけに巨額になるが、呆れたことに、国交省はそのコストを帝国航空につけ回していた。その額は、総額で十億円に及ぶと見積もられているから、山久の憤懣もしかりだ。押し売りよりタチが悪い。

「それにしても信じられないな、これ」

 書類を見た田島が呆れた。「山久さんのおっしゃるように、中身はほとんど同じですよ。これだったら我々の修正再建案を否定する意味がない」

「いや、一部違うところがある。ほら――」

 半沢の指摘に、あっ、と田島の不可解そうな顔があがった。

「羽田・舞橋路線ですか。素案では撤退路線に含めたはずですよね。それが、タスクフォース案では撤退リストから外れたと? 何でですかね」

 半沢も首を傾げたとき、「もしかして――」、といったのは山久だ。

「舞橋市は、箕部啓治の地盤です。だからじゃないですかね」

 半沢は思わず田島と顔を見合わせた。進政党の箕部といえば、元憲民党の大物議員だ。憲民党を離党して進政党を旗揚げした同党の重鎮で、国交大臣の白井は箕部派の若手リーダーという位置づけである。

 山久はいった。「そもそもこの空港自体、箕部がまだ憲民党時代に建設したんです。舞橋空港は別名、箕部空港といわれるほどでして。タスクフォースが削るわけがない」

「つまりこのリストラ案には、経済合理性ばかりではない、別の要因が絡まっているということですか」

 田島が憤然として半沢を見た。「密室で再建案づくりをしているのは、知られてはまずい事情を隠すためなんじゃないですか」

「ふざけた話だ」

 舌打ち混じりに、半沢は吐き捨てた。

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