TBSドラマ「半沢直樹」の原作『銀翼のイカロス』限定公開!
前作のメインキャストに加え、フレッシュな新メンバーの出演で話題沸騰!日本全国に「倍返し!」旋風を巻き起こしたあの怪物ドラマ「半沢直樹」がいよいよ帰ってくる!原作は、「週刊ダイヤモンド」で連載された池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作。読者からの人気記事投票で1位となるなど、連載当時からビジネスパーソンに圧倒的な人気を誇っていた。そこでドラマ放映を記念して、『銀翼のイカロス』序章から2章までを期間限定で特別公開する。*2020年9月末まで

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「それでどうした、乃原のオヤジは」

 ニヤニヤ笑いを浮かべながら聞いていた渡真利は、半沢の話が一段落するのを待ってきいた。

「捨て台詞を吐いて席を蹴りやがった。お前なんか潰してやるとさ。やっぱりヤクザだ」

 焼酎のグラスを右手で持ったまま、半沢はそのときのことを思い出して吐き捨てる。

 銀座のコリドー街にある寿司屋のカウンターだ。焼酎は、常連の半沢のために、わざわざ店主が仕入れている栗焼酎で、飲み方はロック。地下にある店の向かいはライブハウスで、誰が出演しているのか知らないが、客が出入りするたびに昭和四十年代のフォークソングが洩れ聞こえてくる。

「かくして、全面対決に突入ってわけか」

 渡真利はいい、「それにしても、お前に関するつまらん情報も含めて、どっから洩れてんだろうなあ」、と嘆息した。

「さあな。どうせ、オレを敵視している行内の誰かだろうよ」

 半沢は、どうでもよさそうな表情で、白身魚の刺身にわさびをのせている。

「たしかに、旧Tなんか不良債権まみれの銀行だったからな。その頃の不良債権処理で、乃原とつながりができていたとしても不思議ではないな」

 それなら納得だとばかりにいった渡真利は、ふと疑問を口にする。「だけど、他行が万が一債権放棄に賛成した場合、お前も賛成するのか」

「するか、そんなもん」

 半沢は、飲みかけの栗焼酎のグラスを白木のカウンターにトンと戻した。「合理的な理由がなきゃ、あくまで“拒絶”だ。他の銀行に“右へ倣え”してどうするよ」

「そうこなくちゃな。それでこそ、本店営業第二部の半沢次長様だ。さすが、嫌われてるだけのことはある」

「茶化すな。これでも真剣なんだぞ」

 じろりと睨んだ半沢の肩を、「わかってますよ」、と渡真利は叩いた。

「やっぱりさ、この仕事を任せられるのはお前だけだな。オレが頭取でもお前に頼んだだろうよ――まあ呑もうや」

 半沢のグラスが空いているのを見て、渡真利がおかわりを頼んだ。

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