TBSドラマ「半沢直樹」の原作『銀翼のイカロス』限定公開!
前作のメインキャストに加え、フレッシュな新メンバーの出演で話題沸騰!日本全国に「倍返し!」旋風を巻き起こしたあの怪物ドラマ「半沢直樹」がいよいよ帰ってくる!原作は、「週刊ダイヤモンド」で連載された池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作。読者からの人気記事投票で1位となるなど、連載当時からビジネスパーソンに圧倒的な人気を誇っていた。そこでドラマ放映を記念して、『銀翼のイカロス』序章から2章までを期間限定で特別公開する。*2020年9月末まで

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 日比谷公園に近いビルに入っているイタリアンの店に乃原が到着したとき、すでに店の前には黒塗りの公用車が横付けされていた。

 白井が行きつけだというその店で食事をするのは、この夜で二度目だ。洒落のめした店だが、乃原にとってはそんなことはどうでもよかった。なにより、店内禁煙というその一点だけで、この店での時間は苦痛以外の何物でもない。

「お早いですね」

 乃原は、わざとらしく腕時計を見て、約束の時間にまだ十分もあることを確認してみせる。相手が来る前に一本吸っておこうと思ったのに、予定が狂った。

「前の予定が早く終わったものですから。時間までお茶でも飲みながら考え事をしようかと思ったんです」

「であれば、しばらく外しましょうか」

 それなら外でタバコが吸える。しかし、

「いえいえ、結構ですわ。先生とお話をしたほうがはるかに有意義ですから」

 白井はいい、テーブルの反対側に乃原がかけるのを待った。

 旧知であるが、それほど親しい間柄ではない。

 そもそも、白井と乃原とでは、生きてきた世界が違った。白井は華やかなテレビ業界でキャリアを積んで政界へ進出、転がり込んできた政権交代劇の流れに乗ってとんとん拍子に大臣の椅子を手に入れたサクセス・ストーリーの主人公である。

 一方の乃原は苦学して関西の国立大学に進み、公認会計士の資格を得たが、監査法人のごたごたに巻き込まれて二十代は不遇をかこっていた。その後一念発起して司法試験を目指して弁護士資格を得、バブル崩壊後に急増した企業整理の分野に手を染めるや、泥臭い交渉術と奸知に長けた振る舞いで頭角を現し、豪腕の再建屋として名を馳せるまでになったのである。

 キャリアも違えば育ちも違う。