TBSドラマ「半沢直樹」の原作『銀翼のイカロス』限定公開!
前作のメインキャストに加え、フレッシュな新メンバーの出演で話題沸騰!日本全国に「倍返し!」旋風を巻き起こしたあの怪物ドラマ「半沢直樹」がいよいよ帰ってくる!原作は、「週刊ダイヤモンド」で連載された池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作。読者からの人気記事投票で1位となるなど、連載当時からビジネスパーソンに圧倒的な人気を誇っていた。そこでドラマ放映を記念して、『銀翼のイカロス』序章から2章までを期間限定で特別公開する。*2020年9月末まで

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「進捗状況はいかがですか、乃原先生」

 最初のワインが運ばれてくるのを待って、白井はきいた。

「書類でご報告した通りでしてね。財務内容の精査が百人体制のチームでようやく先日終了しまして、具体的な再建案づくりまで着手しているところです。まずは予定通りと見ていいでしょうな」

「再建はうまく行きそうなんですか」

 短絡的に結論を知りたがるのは、テレビ業界で身についた悪い癖だとわかっているが、このときの白井はつい口にした。

「腐っちゃいるけれども、あれだけの会社なんですから、借金を軽くしてやれば立ち直りますよ。あとは運転資金が途切れてしまわないよう、うまく資金注入してやればいい」

 乃原は、いとも簡単にいってのける。

「借金を軽くするなんてこと、できるんですか」

 白井の質問に、「できますよ、そりゃ」、と乃原は薄笑いを浮かべた。「銀行に債権放棄をさせればいいんです。七割カットの線で申し入れています」

 白井は、その割合が示す内容も重みもまったく意に介する様子もなく、「銀行に助けてもらえれば、帝国航空も安心ですものね」、と現場感覚の欠片もない言葉を口にする。

「そういうことです。特に帝国航空の取引銀行は、どこもいままで同社への融資で儲けてきたんですから、それぐらいのことはして当然だ。銀行に対しては世論も手厳しいですからね。七割カットの債権放棄ぐらい、国民の誰もが納得ですよ。むしろ拍手喝采ではないかな。反対する者なんかいやしません」

「貸し渋りに貸し剥がしで、銀行もやりたい放題でしたものね」

 さして実態を知っているわけでもないのに、白井は決め付けた。「それで前政権が決めていた修正再建案とかいうのは、潰していただけたんでしょうか。実は一昨日にも、箕部先生からくれぐれもよろしく頼むといわれたばかりなんです」

「もちろんですよ」

 にやりとして乃原はこたえた。「ご心配なく。抜かりはありません」

「それについて何か文句をいっているような人は──」

 遠慮がちに、白井は相手の表情を窺う。

「ありません。というか、そんなことはいわせませんよ、大臣。あの路線は必要だから残すんです。違いますか」

 頼もしい乃原の言葉に、白井はつい破顔した。

「その通りですわ、乃原先生。素敵な再建案になりそうですわねえ」

「素敵も素敵。最高にシビれる再建案ですよ、大臣」

 乃原はタバコのヤニで黄色くなった歯を見せていった。「低空飛行でいまにも墜落しそうだった帝国航空が、我々の再建案で短期間に復活するんですからな。これはまだアイデア段階なんだが、回答期限に取引銀行をみんな集めましてね、合同の報告会という形でやろうと思ってるんですよ」

「セレモニーにするわけですね」

「その通り。その後記者会見を開いて、堂々、勝利宣言いたします。これこそ白井マジックだ、とぶち上げさせていただきますよ」

「白井マジック……いいですわねえ」