TBSドラマ「半沢直樹」の原作『銀翼のイカロス』限定公開!
前作のメインキャストに加え、フレッシュな新メンバーの出演で話題沸騰!日本全国に「倍返し!」旋風を巻き起こしたあの怪物ドラマ「半沢直樹」がいよいよ帰ってくる!原作は、「週刊ダイヤモンド」で連載された池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作。読者からの人気記事投票で1位となるなど、連載当時からビジネスパーソンに圧倒的な人気を誇っていた。そこでドラマ放映を記念して、『銀翼のイカロス』序章から2章までを期間限定で特別公開する。*2020年9月末まで

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「何なんですか、あの男」

 公用車の後部座席におさまるや、白井は吐き捨てた。「自分のことを何様だと思ってるのかしら。本当に腹の立つ」

「ゴロつきですよ、あんなのは」

 隣の席におさまった乃原は、スーツの内ポケットからタバコを出したが、白井の公用車だったと思い出して引っ込める。「社会性を無視して自らの利益のことしか考えない、ただの金貸しだ。その証拠に、礼儀も知らなかったでしょう」

「あんな人に帝国航空のような重要な会社の担当を任せておくなんて、いったいどういう銀行なんでしょうか」

 白井の憤慨に、乃原は内心にんまりとしながら自らも怒りの表情を浮かべてみせる。

「銀行なんてのは、そういうところなんです。甘やかせばつけ上がる。大した能力もないのに、プライドばかり高い。だから始末に悪いわけだ」

「バブルのときに潰れてしまえばよかったのに」

 白井は極端な発言をした。オフレコのときの白井は毒舌だ。世間には見せない素顔である。「そうすれば、もっと謙虚になったんじゃありませんか」

「それもすべて憲民党のせいですよ」

 乃原は、白井の関心事と政治をそろりと結びつけてみせる。「金融秩序だなんだと理由をつけて、連中が必要もない銀行を生き残らせたのがいけなかった。結局のところ、憲民党の政治家たちは、銀行と持ちつ持たれつのなれ合いを演じてきたに過ぎない」

「憲民党政権によって、日本の国がいかに蝕まれてきたのか。いまこそ、それを国民に知らせるときです」

 白井は毅然としていい、大企業の本社ビルが建ち並ぶ大手町の街並みに決意を秘めた視線を向ける。

「それにしても、銀行員なんてのは、所詮悲しい連中だ」