TBSドラマ「半沢直樹」の原作『銀翼のイカロス』限定公開!
前作のメインキャストに加え、フレッシュな新メンバーの出演で話題沸騰!日本全国に「倍返し!」旋風を巻き起こしたあの怪物ドラマ「半沢直樹」がいよいよ帰ってくる!原作は、「週刊ダイヤモンド」で連載された池井戸潤氏の『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』の2作。読者からの人気記事投票で1位となるなど、連載当時からビジネスパーソンに圧倒的な人気を誇っていた。そこでドラマ放映を記念して、『銀翼のイカロス』序章から2章までを期間限定で特別公開する。*2020年9月末まで

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「話はきいたけどもさ、紀本さんもそれはないだろう。いったい、どっちの味方なんだ」

 白井大臣の“カチ込み”の話は、あっという間に本部内に広がっていった。もちろん、行内きっての情報通を自他共に認める渡真利の耳に、それが入らないわけはなく、「何時に上がれる? ちょっと寄って行こうや」、と半沢のデスクに電話がかかってきたのは、その日の午後九時過ぎのことである。

 ふたりで出かけたのは、神田にあるベルギービール専門店であった。ちょうど二席空いていたカウンターに並んでかけ、モアネットの大瓶をシェアしている。

「そこまでいくと、悪意だろ」

 渡真利が決めつけた。「それとも、乃原の銀行嫌いを知って、ゴマでもすろうと思ったか」

「銀行嫌い、なのか、あいつは」

 半沢はどうでもよさそうな口ぶりでのんびりときく。

「オレも乃原という男について興味があったんでさ、知り合いにきいてみたんだ。ほら、ウチの融資管理部の戸村って知ってるだろ」

 半沢はうなずいた。二期下の調査役で、本部内の打ち合わせで何度か顔を合わせたことがある。

「倒産絡みの案件を専門にしてるからもしやと思ったんだが、案の定、乃原とは何度かやり合ったことがあるっていうんだよな」

 融資管理部は不良債権化した融資を専門に扱う部門で、いわば乃原と同じ業界だ。

「昔っから、乃原の野郎はやりたい放題だったらしいんだが、あるとき、乃原と一緒に仕事をしたことがあるという弁護士から、乃原が銀行嫌いになった理由をきいたらしい」

「それで?」苦みのあるビールを一口飲み、半沢は先を促した。

「その理由っていうのが──子供の頃のいじめさ」