「生きづらい」「居場所がない」引きこもり実態調査の深刻な中身「ひきこもり」状態にあると自認する900人以上を対象に行われた実態調査。見えてきたのは……(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「生きづらさが改善しない」
引きこもり当事者たちの本音

 引きこもり経験者らでつくる当事者団体が、現在「ひきこもり」状態にあると自認する900人以上を対象に実態調査を行った結果、6割が働きたいと思っているのに、その大半は「就職しても生きづらさが改善しない」と考えていることがわかった。

 調査を行ったのは、引きこもり経験者や、発達障害、セクシャル・マイノリティといった当事者でつくる一般社団法人「ひきこもりUX会議」。この『ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019』は、2019年10月から11月にかけて、SNSなどのオンラインやイベントで調査用紙を配布し、1686人から回答を得た。この調査結果は、社会学者の新雅史氏が分析し、3月26日に公表された。

 調査によると、「現在『ひきこもり』「ですか」の問いに「はい」と答えた人は、全体の65%の940人。その中には、今は就職や就労、就学していても「生きづらさがある」などの理由で「ひきこもりだと思っている」人も13%いた。

 また、これまで「ひきこもりだったことがある」経験者も含めると、回答者は86%の1448人に上った。

 2019年3月に公表された内閣府の40歳以上の実態調査は、調査対象者5000人のうち、「ひきこもり」群の定義に該当した47事例という少ないサンプルから試算せざるを得なかった。周囲には知られたくない、生きている価値がないと思わされている「引きこもり」という特徴は、行政でも調査方法が難しいと言われている。それだけに、これだけ数多くの当事者の状況や背景が初めてデータで示されたことは注目される。

 現在「ひきこもり」と自認する940人の性別(性自認)は、女性の割合が61%と多かった。これまでの行政の調査では、男性のほうが7割~8割と多く、男性特有のイメージがあったことについて、同団体の林恭子代表理事は「もともと私たちが活動している現場では、半々くらいの割合という実感があり、社会からのプレッシャーは同じなのではないか」と説明する。