前回、GPTW(Great Place To Work)インスティテュートが実施している「働きがいのある会社」ランキングの話をした(記事参照)。数多くある「会社ランキング」のなかで、僕がGPTWのランキングを気に入っているのは、意識調査で「よい会社」をランキングするとしたら、いちばん説得力があるのは「従業員の声」だという論理的な理由があるのだけれど(これについても以前書いた。記事参照)、もっとあっさりいえば、僕が個人的に思い浮かべる「よい会社」がこのランキングにたくさん入っているからだ。

戦略が優れた会社との一致

 もちろん「よい会社」という話は評価する側の基準の持ちかた次第だ。「マイよい会社(僕が選んだよい会社、の意)ランキング」の基準は、僕の関心からして、「戦略が優れた会社」ということになる(「じゃあ、『戦略が優れている』の基準は何なんだ?」という方は、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』という拙書をお読みください)。

 GPTWのランキングにあるすべての会社の戦略に通じているわけではないのでバイアスがかかっているとは思うが、ワークスアプリケーションズ、Plan・Do・See、ガリバーインターナショナル、良品計画、ライフネット生命あたりは、仮に「いま日本で戦略的に優れた会社を挙げるとすれば?」と聞かれたら即座に思いつく「マイよい会社」だ(個人的な好みといえばそれまでですが)。

 こうした会社の戦略は、さまざまなアクションやディシジョンが骨太の因果論理でつながってできている。その結果、戦略がユニークなストーリーになっており、ストーリーのレベルで持続的な差別化を実現している。上にあげた会社の戦略は、いずれも解読すればするほど「なるほど、よく考えたね!」と唸らされる名作だ。

 優れた戦略を創造した会社(もしくは事業)を評価する賞に「ポーター賞」がある(これについても前にも話した。記事参照)。ポーター賞の評価基準は僕の考える「優れた戦略の条件」と完全に一致するわけではないのだが、受賞企業の顔ぶれをみるとぼくが納得のいく会社ばかりだ(http://www.porterprize.org/pastwinner/を参照)。

 面白いことに、ポーター賞の受賞企業の中には「働きがいのある会社」ランキングにも出てくる会社が少なくない。上にあげたGPTWの常連のうち、Plan・Do・See、トレンドマイクロ、堀場製作所、ガリバーインターナショナル、良品計画、バンダイ、これらの企業はポーター賞も受賞している。2012年のランキングには入っていないが、2009年から2011年まで連続してランクインしたマルホもポーター賞受賞企業だ。世にはこれだけ多くの会社があることを考えると、相当に高い確率で、「働きがいのある会社」と「戦略が優れた会社」は重なっているといえるだろう。