株式レポート
8月16日 18時0分
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良い金利上昇は続くか? - 村上尚己「エコノミックレポート」

8月8日レポートでは、「政局で金利急上昇懸念」とする日経記事について、日本の政治要因が金利上昇リスクにならない、ことを説明した。日本は、債務問題に苦しむ南欧諸国とは経済環境が全く異なるからで、仮に消費増税を巡り政局が動いても、それはごく短期的な材料に過ぎないと考えたからである。

・レポートで、「(海外経済など)外部環境が変われば極めて低い金利水準は容易に変わる」「懸念すべき金利の急上昇と言えるか」とも述べた。実際に、日本の10年金利の動きは、国内独自の要因が影響することはかなり稀である。

・日本は、デフレにより国内需要が抑制されているため、世界経済・輸出の回復によってのみ自律的な景気回復が可能であるためである。だから、日本の金利は、米国経済状況を反映する米国金利に連動する。グラフは、日米の10年金利の動きを比較しているが、8月7日に報じられた日本の金利の「大幅な上昇」も、既に上昇が始まっていた米国10年金利の後追いだったことが分かる。


・もちろん、こうした実態について債券市場の投資家は十分認識している。「政局と金利上昇」について、強調して説明したいメディア側の事情(いくつか想像できるが割愛する)があり、市場の実態とかけ離れた見方が誇張されていたということだろう。

・こうした中で、本日(8月16日)の日経新聞では、「良い金利上昇は続くか 米景気の悲観論薄れる」という記事が掲載された。米国経済への慎重な見方が後退し、米国金利が上昇し、それを主因に日本の金利も上昇しているとの記事である。より正確に、日本の債券市場の状況を表す記事に変わったということだろう。

・さて、今週に入ってから米国10年金利は1.8%台と、5月半ばの水準まで大きく上昇している。先行きの景況感などについて米国株と米国債券市場で、7月末まで見方が分かれていたが、債券市場の慎重な見方が株式市場に近づく格好で、金利が上昇している(グラフ参照)。既に米国株は、5月初旬の高値付近まで上昇している。


・債券市場の見方が、米国株に近づいたきっかけの一つは、8月3日に発表された、7月分の米雇用統計が予想外に上振れたことだった(8月6日レポート)。そして、雇用統計同様、同月分の小売売上や鉱工業生産が、停滞した4―6月対比で大きく伸びたため、景気減速懸念が和らぎ、FRBによる金融緩和期待が後退したわけだ。

・ただ、足元の金利上昇は、米国やドイツが「日本化する」ことを織り込むところまで、安全資産である債券が極度に買われていたが(6月1日レポート)、その過度な悲観が修正され妥当な水準まで戻ったという面も大きいだろう。

・米国の国内景気が、2010、11年同様に、市場が悲観一辺倒になったほど悪くないのは、最近の米国の経済指標の結果から素直に判断できる。ただ、7月に改善した雇用、消費関連指標の回復が、停滞していた6月からの反動増に過ぎず、持続的な回復を意味しない可能性がある。

・というのも、一方で、米国の製造業の景況判断指数の悪化は変わらず、欧州・新興国経済の減速が米製造業の下押しとなる状況は変わっていないからだ(8月10日レポート)。2012年春先の状態への正常化を早々と織り込み、また「2010年の再来」も想定している現状には、やはり違和感を感じざるを得ない(8月14日レポート)。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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