家電大手のシャープの経営危機が、お盆休みの間に一気に噴出した。過去最悪の3900億円の最終赤字を計上した前期に続き、今期も主力事業の液晶テレビ「AQUOS」や太陽電池の赤字に歯止めがかからない。そして社運を賭けてつかみ取った“救世主”が取った行動とは──。

 たった1通の公告が、シャープの経営状態についての“不安の連鎖”に、火をつけてしまった。

「シャープの株価が急変したため、2012年3月27日に合意した投資(1株550円で9.98%を取得し、シャープの筆頭株主になるという条件)を、鴻海グループは実行しなくてよいということで合意しました」(原文・台湾語)

 8月3日午後5時47分、金曜日。台湾証券取引所のインターネットサイトに、鴻海グループによる公告が突然掲載されると、またたく間に市場関係者らの間に不安の輪が広がった。

「どういうことなんだ」。シャープ社内でも、うめき声が上がった。

 目下のところ、シャープはテレビ用の液晶パネルなど、主力事業の赤字に歯止めがかからない。前日に発表した13年3月期の第1四半期決算では、大幅に下方修正をして、通期で2500億円の最終赤字を見込むという、窮状をさらしたばかりだった。

 頼みの綱は、今年3月に助けを求めた台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手、鴻海グループだ。彼らとの業務提携こそ、シャープ復活の“切り札”として期待されていたのだ。

 鴻海グループは米アップルのiPhoneをはじめ、ソニーや任天堂など大手メーカーの商品を生産する巨大企業。シャープは技術を提供しつつ、コストや事業面で恩恵を受けられる、はずだった。