なぜ、どのように新型コロナウイルスは出現したのか、どうして感染は急速に世界に広がったのか、そもそもウイルスとは何か、いったいいつから地球に存在しているのか、抗コロナウイルス薬とは、どのようなメカニズムで効くようになるのか。いやはや分からないことだらけだ。「ウイルス学」を初歩から自習してみることにした。(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)

パンデミックの世界史

ウイルスのイメージウイルスについて、初歩からおさらいしてみよう Photo:PIXTA

 はじめに、世界史上、大規模なパンデミックを調べてみた(★注1、2)

 14世紀……ペスト(17世紀までたびたび世界各地を襲う)。ヴェネチアの商人はコショウなどの香辛料(薬品でもある)を求めてアジアへ進出した。14世紀のペストによる死者は世界で1億人といわれている。なお、北里柴三郎らがペスト菌を発見したのは1894年だから、14世紀パンデミックの500年後である。

1918~19年……スペインかぜ(H1N1インフルエンザウイルス)。この新型インフルエンザによるパンデミックによって、世界で4000万から1億人が死亡したといわれる(諸説あり)。日本の死者は38万人説と45万人説がある。著名人の犠牲者は詩人ギョーム・アポリネール(仏)、経済学者マックス・ウェーバー(独)、画家エゴン・シーレ(オーストリア)、グスタフ・クリムト(同)、辰野金吾(建築家)、島村抱月(劇作家)など。第1次大戦終了のきっかけともなった。

1970年代~……エボラ出血熱(エボラウイルス)。70年代から現在まで断続的に出現。西アフリカで2014年に広がったエボラ出血熱の死者は1万人を超える。

2002年~03年……SARS(重症急性呼吸器症候群、サーズ・コロナウイルス)、死者は37カ国で774人。

2009年~10年……新型インフルエンザ(H1N1インフルエンザウイルス)。死者1万8000人超。リーマン・ショック直後の世界に蔓延した。このインフルエンザは若年層が多く感染、発症した。

2012年~……MERS(中東呼吸器症候群、マーズ・コロナウイルス)、死者は約1000人。

2019年~20年……新型コロナウイルス(急性呼吸器疾患COVID-19)、感染者、死者が急増中。東京オリンピック・パラリンピックは1年延期を余儀なくされ、世界不況を呼ぶことになる。現在進行中。

 新型コロナウイルスによる地球規模の世界同時パンデミックは、スペインかぜ以来100年ぶりである。100年前と違うのは、現代社会がグローバルな資本主義市場経済体制であること、そしてインターネットとAIによるネットワーク社会が発達していることだろう。これらの特徴によって、ウイルスの拡散、感染が史上最速で進み、デマの拡散も高速になり、買い占め、転売、詐欺行為も急速に広がった。

 それにしても、どうしてこのようなヤバいウイルスが出現したのだろうか。