日本全国からの注目を浴びている東京スカイツリー。東武鉄道が社運を懸けて1430億円を投じたプロジェクトの採算を、さまざまな角度から検証し、グループ各社への波及効果を探った。

 東京の新名所として、今年5月に空高くオープンした東京スカイツリー。東武鉄道が総額1430億円をかけ開発したものである。

 開業後の2カ月間で、東京スカイツリータウン全体の来場者数は実に1029万人。このペースでいけば、初年度目標の3200万人に半年で到達する勢いだ。

 今のところ好調だが、巨大プロジェクトの採算は、いかほどのものなのか。東武鉄道が公表している東京スカイツリープロジェクトの収支計画などを基に検証する。

 まず、こうした大型開発では、「プロジェクトにかかった借入金を13~14年で返済できるかが採算を測る目安。このためには、初年度の売上高が設備投資額の10分の1を上回ることが必要」(石澤卓志・みずほ証券チーフ不動産アナリスト)だ。

 スカイツリープロジェクトの総投資額は1430億円である。対して、営業収益(売上高)は、初年度(2012年度)は営業期間が約10カ月しかないにもかかわらず、201億円を見込む。投資額の10分の1を大きく上回る。

 これは、東武鉄道が所有していた貨物駅跡地での開発であり、土地取得費がかからず、総投資額が抑えられたことが大きい。

 営業期間が12カ月となる開業2年目(13年度)の計画を基に別の角度から投資を分析していこう。

 東武鉄道が計画するスカイツリー(電波塔)の売上高は123億円。その内訳は明らかにされていないが、アナリストなどの試算によると、テレビ局から支払われる電波使用料が20億~30億円とみられている。

 残りがスカイツリーの入場料からの収入だ。大人1人の料金は、事前予約で450メートルの展望回廊まで上ると3500円。来場予定者数は400万~460万人だが、団体割引や子ども料金もあるため、1人当たりの平均単価は2000~2500円程度となりそうだ。このため入場料収入は、90億円前後と想定される。

 店舗やオフィスからなるスカイツリータウン部分は賃料収入108億円を見込む。