不動産のプロがコロナ禍を分析

銀行の未来の姿に光を当てる連載『銀行の近未来』。今年4月、みずほ信託銀行の社長が交代し、不動産業務に長く従事してきた梅田圭氏が新社長に就任した。梅田氏に、新型コロナウイルスの感染拡大が不動産業界にもたらす影響と、今後のみずほ信託が目指す姿を聞いた。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

不動産畑を歩んだみずほ信託新社長に
新型コロナが不動産にもたらす影響を聞く

――新型コロナウイルスの感染拡大の影響が産業界を直撃し、リモートワークの推進が急速に進んでいます。この動きはオフィスビルの実需の低下を意味するようにも見えますが、新型コロナがもたらす不動産への影響をどう分析していますか。

 不動産の資産価値を理論的に考えると、例えば、固定資産税などを全て支払った後に発生するビルのキャッシュフローが10億円とする。この10億円が毎年入る場合も、マーケットの伸びに合わせてわずか数%ずつでもキャッシュフローが伸びる場合もある。こうしたリスクプレミアム(リスクを踏まえた追加利回り)を加えた利回りで割り戻したものが、不動産の現在価値だ。

 平成のバブル時には、今話した不動産の収益をベースにした価値の概念がマーケットに浸透しておらず、「1坪100万円か、それとも150万円か」といった相場師的な売買マーケットが成り立っていた。今は、それとは別世界だ。

 すでに、収益還元の世界が浸透していたリーマンショックのときには、不動産マーケットの崩壊の裏で二つの問題が発生していた。一つが、金融システムが壊れ、不動産の売買をバックファイナンス(不動産担保融資)で支援していた金融機関が、ある日突然いなくなったこと。もう一つが、当時の投資銀行は不動産向け貸し出しをまとめて証券化してCMBS(商業不動産担保証券)という金融商品をつくっていたが、これが当初の時価のおよそ70~75%でたたき売られたことだ。

 では今、新型コロナの影響で何が起きているか。