ITアウトソーシングは自社のビジネスに必要な技術・ノウハウが外注先に溜まる典型

 ビジネスでは、「特定の取引相手にのみ有用な、特殊な資産・技術・知識・立地」などがあることは多い。皆さんの中にも、「自社のビジネスに必要な技術・ノウハウが外注先に溜まってしまい、結果として外注先が交渉上有利になった」という経験を持つ方もいるのではないだろうか。

 ITアウトソーシングは、その典型だ。企業が社内システムをITベンダーに外注する時は、社内の様々な情報をベンダーに提供する必要がある。また、ITシステムはそのクライアント企業・事業部向けにカスタマイズされることも多く、中身は複雑で、クライアント企業だけでハンドリングできるものではない。結果、しばらく経ちクライアント企業がシステムを更新したい時にそのベンダーに見積もりを出してもらうと、前回よりもはるかに高い金額を要求されることがある。

 驚いて他のベンダーに切り替えようとしても、すでに社内の重要情報が当該ベンダーに蓄積されているし、そのベンダーによってカスタマイズされた複雑なITシステムが組み込まれているから、結果そのベンダーに高い金額を払って再発注せざるを得なくなるのである。

(広義の)経営学には、情報技術(IT)ビジネスを研究する management of information systems という一大分野がある。この分野の主要研究トピックは、ビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)などのITアウトソーシング戦略だが、その説明には大抵TCEが使われる。

(図表2) 拡大画像表示

 図表2はこの資産特殊性(あるいは広範に「関係特殊性」〔relational specifi-city〕という)の例をまとめている。ぜひご自身のビジネス取引に当てはめて考えていただきたい(※2)