Yao氏は「われわれの研究では、高い気温や紫外線量がCOVID-19の感染拡大を抑え得るとする仮説を支持する結果は得られなかった。現時点では、暖かくなればCOVID-19の感染者数が減ると考えるべきではないだろう」と説明している。こうした特徴は、2012~2013年に流行した中東呼吸器症候群(MERS)に類似していると、同氏らは指摘する。流行当時、アラビア半島では、気温が華氏113度(摂氏45度)まで上昇したにもかかわらず、MERSの感染拡大は続いていた。
ただし、Yao氏らは、今回の研究結果が確定的なものではないことを強調しており、「今後、より長期の追跡期間で、より幅広い範囲の気温との関係を調べる研究を行う必要がある」としている。
ソーシャル・ディスタンシングの継続が重要
しかし、希望も残されている。Yao氏らも説明しているが、寒い季節には上気道感染症の患者が増えるが、暖かくなるにつれて感染者数は減る。その明確な理由は不明だが、複数の要因が考えられるという。例えば、夏になって日照時間が増えると人々のビタミンDレベルが上昇し、免疫システムが活性化する可能性があること、また、日光の紫外線がインフルエンザや一般的な風邪の原因となるウイルスを死滅させる可能性があることなどだ。さらに、夏には学校が休みになる国が多く、小児の間で感染が広がりにくくなることも感染の抑制に寄与している可能性があるという。
この報告を受けて、米ロング・アイランド・ジューイッシュ・フォレスト・ヒルズの感染症専門医Miriam Smith氏は、COVID-19の感染拡大の勢いを最終的に弱めるのは、気候以外の要因だろうとするYao氏らの見解に同意を示している。その上で、「集団免疫の獲得や科学的根拠に基づく有効な治療法の導入、ワクチンの開発が実現するまでは、引き続きソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)が感染拡大を阻止するための重要な戦略になるだろう」と話している。(HealthDay News 2020年4月9日)
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