中国人新型コロナ問題を機に中国礼賛派の在日中国人が増加。中国共産党の暴走を危惧する人たちとの間で分断が生まれつつある(写真は本文と関係ありません) Photo:JIJI

他国に先駆けて新型コロナ禍が収束したかに見える中国と、いまだ出口が見えない日本。在日中国人たちは今、どんな思いを抱えて暮らしているのか。メディア関係者、会社社長、レストラン経営者など複数の在日中国人たちに話を聞くと、彼らの間に広がる意外な“分断”が見えてきた。(ライター 根本直樹)

中国共産党の熱烈支持者が
日本で急増する背景

「日本はもちろん、世界一の大国の米国でさえ新型コロナを収束させることができずにいるのに、中国はわずか3カ月でほぼ解決してしまった。何万人も死んでいる欧米に比べて死者数も圧倒的に少ない。何だかんだ言って、中国共産党はやっぱりすごいですよ。以前は劣等感もあったけど、今は中国人であることがとても誇らしい」

 こう語るのは東京池袋で中国東北料理の店を経営する男性(ハルビン市出身・40代)だが、こうした中国共産党を“礼賛”する声を多くの在日中国人から聞いた。コロナ以前にはあまりなかった現象である。

 中国からマスクなどを輸入する会社で働く女性(瀋陽市出身・30代)も言う。

「これまでは一党独裁の中国出身ということに引け目を感じる部分もあったけど、今は違います。『もしかして中国ってすごい国?』とか思っちゃいますね(笑)」

 実際に話を聞いた在日中国人だけでなく、彼らの大半が使っているSNSのウィーチャット上にも、コロナ以降「中国すごい」の声があふれるようになった。

 これまでは、母国に対して複雑な思いを抱く在日中国人は少なくなかった。

 経済的には日本を凌駕したけれど、政治・言論の自由のない母国はまだまだ後れた国である。日本の街にはゴミひとつ落ちてないのに、母国は不潔だ。林立するビル群などを見るといかにも発展しているように見えるが、サービスなどのソフト面はまだまだ低レベル……。

 こうした母国へのネガティブな思いを語る在日中国人も多かったが、コロナ禍をきっかけにガラリと変わってしまったようだ。

 そして同時に米国を敵視し、日本をやゆする声も広がっている。