日銀の新型コロナ対策、「できることは何でもやる」に潜む落とし穴コロナ対策として日銀が「何でもやること」は、どこまで妥当なのか(Photo:PIXTA)

日銀が4月の金融政策決定会合で
踏み切った追加緩和の中身

 日銀は4月27日に開催した金融政策決定会合(MPM)で、(1)コマーシャルペーパー(CP)や社債の買入増額、(2)新型コロナ対応金融支援特別オペ(以下、特別オペ)の利便性向上、(3)国債のさらなる積極的な買入れ、を決定した。

 黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、新型コロナウイルスの影響で苦境に立つ企業の資金繰りや金融市場安定化のため、「できることは何でもやる」と強調した。中身を順に見て行こう。

 まず、CPと社債の買入増額だ。これまで合計7.4兆円としていた上限額を、約3倍の20兆円まで引き上げた。また、1社当たり買うことのできる上限額を緩和したほか、買い入れる社債の残存年限も従来の1~3年から5年に延長した。

 こうした措置により、日銀の買入額は大きく膨らむことが予想される。ただ、残念なのはCPと社債によって資金調達をしている企業の数が多くないことだ。「資金循環統計」によると、CPと社債による資金調達は企業の資金調達全体の8%に満たない。

 さらに、CPと社債の市場規模は90兆円台とそれほど大きくないため、日銀が20兆円も買うと、投資家の投資機会を奪うだけでなく、市場機能を低下させることにもなる。日銀は9月までの時限措置としているが、適切な判断だろう。

 一方特別オペは、民間企業向け債権を担保に、その範囲内で最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペとして3月に導入された。今回、その担保の対象範囲を住宅ローンなど個人向け債権にまで広げ、オペの可能額を8兆円から23兆円に拡大した。

 さらに、農林中央金庫信用組合や全国信用協同組合連合会といった系統中央機関だけでなく、その下部組織である会員金融機関にも資金がまわるよう特則を設けた。なお、特別オペでは、オペに対するインセンティブを高めるため、オペ残と同額の当座預金に0.1%の金利が支払われる(付利)。

 解釈が難しいのが、3つめの「国債のさらなる積極的な買入れ」だ。声明文には、「政府の緊急経済対策により国債発行が増加することの影響も踏まえ」「イールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、当面、長期国債、短期国債ともに、さらに積極的な買入れを行う」とある。これに債券市場が反応し、長期金利は小幅ながら低下したのだが、そもそも10年金利の誘導目標「ゼロ%程度」は変えていない。