アメリカを中心とした国際的資本移動を見ることにより、金融政策や金融情勢と資本移動の関係を見ることができる。アメリカと全世界の関係を一括して見るより、相手国との関係を見ることによって、そうした姿が浮かびあがる。アメリカにはこうした分析を行なうことのできる詳細なデータが経済分析局(Bureau of Economic Analysis=BEA)によって提供されているので、便利だ。

金融条件を敏感に反映する
米英間資本移動

 イギリスは全世界を相手にして金融仲介を行なっているので、米英間の資本移動は、金融情勢を敏感に反映している。これらの取引を行なっているのは、全世界の機関投資家やヘッジファンド、金融機関などだ。

 アメリカ側からイギリスとの間のネットの動きを見ると、【図表1】のとおりだ。

 これを「対外投資(アメリカ人によるイギリス資産の取得)」と「対内投資(イギリス人によるアメリカ資産の取得)」に分けると、【図表2】のとおりだ。

ユーロ危機の原点は、ユーロ国債への投資
ユーロ危機の原点は、ユーロ国債への投資

 アメリカとイギリスの関係で特徴的なのは、対内投資と対外投資が同じくらいの規模であることだ。つまり一方的な流れではない。これは、経常収支で大きなアンバランスがないからだ。ただし、イギリスからアメリカへの投資がやや多く、結果としてアメリカに資金流入になっている。

 また、対外投資も対内投資も、金額が大きい(2006、07年頃は5000億ドル程度だった)ので、受動的に影響を受けるだけでなく、金融条件に影響を与える可能性もある。