「自分たちができること」から発想したサービスは誰も求めない

 起業した当初は「多くて15人くらいの会社を、細々とやっていければいいや」くらいの気持ちでした。自社のサービスを作りつつも、(外部資本を入れずに)のびのびと事業をやるのがいいと思っていたんですよね。

 実際、銀行から少しだけ借り入れをして、あとは受託で稼いだお金で自社サービスを作るというようなことをやってみたんですが、これが全然うまくいかなかったんです。

 その理由は大きく2つあるんですけども、1つ目はやはり中途半端になってしまっていたということです。半年間かけて自社サービスを開発したらお金がなくなっているんで、今度は受託で食いつなぐ。そして2、3カ月受託をして、ある程度お金に余裕ができたらまた自社サービスを作っていたんですけれども、その受託をしていた2、3カ月の間にサービスは死んでしまいます。そんなことを何度も繰り返していました。

 2つ目の理由は、「自分たちができること」から発想した結果、誰も欲しがらないサービスを作っていたことだと思います。SmartHRは、世の中の課題やユーザーの課題を解決しようという発想で、課題から作ったサービスです。ですが初期の自社サービスは、机上の空論でものづくりをしていました。自分たちができることから発想しても、誰もそのサービスを欲しがりません。

 そんな理由から、起業から2年間くらいは鳴かず飛ばずの状態でした。いつも銀行口座の残高はギリギリでした。会社の口座残高が10万円を切ったことも2回ありました。「会社の残高は10万円、自分の残高10万円、しかも来月には子どもが生まれる」という状況に陥り、これはいよいよヤバい、どうしようかと考えました。当時のメンバーは、共同創業者と2人きり。このままだと自分たちは何者にもなれないし、会社も死んでいく……。そんな風に思いながら漠然と働いていました。