「10回のピボットまでは頑張ろう」

 そこからはめちゃくちゃにピボットをしました。まず「(こんな課題があるのではないかという)課題の仮説」を立てて、それを解決できそうなサービスのプロトタイプを作ります。それについて5〜10人にくらいにヒアリングして、課題としてアリかナシかという判断を1週間でやる――こんなことを2カ月間くらいずっと繰り返していました。

 ですが、なかなか僕たちにぴったりとハマる課題というのは見つからなかったんですよね。課題を見つけるのが本当に難しい。なんというか、便利な世の中なんですよね(笑)。

 そんな中で、たまたま奥さんの産休・育休手続きを「おっ、世の中の課題があった」みたいな感じで見ていたんですよね。それで社会保険を調べてみたら、「これこそみんなが困っていることだ」っていう感じだったんですよ。それがSmartHRを作るきっかけです。

 今までのヒアリングでのお客さんのリアクションって、「そうですね……まぁ強いて言えば困っている……うーん困ってます」と、無理やり言ってくれるようなところがありました。ですが、「社会保険手続きって月何回くらいありますか?」とか「役所でどんくらい待ちます?」とかいった質問をしただけでも「ちょっと聞いてくださいよ!!」といった感じで、聞いてもいないことまで話してくれるんです。みなさん熱量が高くて。これが「世の中の課題を見つけた」ということなんだと思ったのを、すごく覚えています。

 本当に無茶苦茶にピボットしていました。最初は2つプロダクトを世に出して、たたんだんです。それからは(実際にコードを書くに至らないが)課題を見つけてプロトタイプを作ってと10回繰り返して生まれたのがSmartHRです。だから、これまで合計で12回のピボットをしてきました。

 毎週のようにピボットしていましたが、「10回目」という数字については、すごく印象深く覚えているんです。なぜかというと、Onlabの卒業生にFOND(当時の社名はAnyPerk)という会社を立ち上げた福山太郎さんという人物がいるんです。彼は、米国の著名アクセラレーター・Y Combinator(Y Com)の採択企業に日本人起業家として初めて選ばれたんですけれど、彼がY Comにいた時、めちゃくちゃピボットしたらしいんですよ。どこかの記事で「10回ピボットした」みたいなことを話していたのが記憶にあったんです。なので僕らも「10回目までは頑張ろう」と思っていたんです。