香港デモ5月24日の抗議デモでは「天滅中共」というポスターが目立っていた(香港島銅鑼湾) Photo by Yoshikazu Kato

警察の装備が厳重化
香港に漂う緊張感

 「あれ、何かおかしいな」

 先週土曜日(5月23日)の夕方、香港駐在の西側外交官の間で「西環」(SAIWAN)と呼ばれる建物を目の前にしてそう思った。中国中央政府駐香港連絡弁公室(略称「中連弁」)を警護する香港警察が、通常の警察から、暴動に対応するために訓練、装備されてきた治安警察(riot police)に「衣替え」していたからだ。

 昨年6月以来、逃亡犯罪人引渡法の改正をきっかけに勃発した一連の抗議デモの中で、「勇武派」と呼ばれる抗議者と向き合い、武力を行使してきた機動部隊である。

香港デモ中連弁正門には「一党専制を終わらせろ」、「民主人権なくして国家安全など語れない」といった主張が貼られている(香港島西環) Photo by Y.K.

 中連弁付近には治安警察の任務執行を支える専用の車両が止まり、ピリピリしたムードが漂っている。世界を震撼させている新型コロナウイルス感染症は香港にも襲いかかっており、今年に入ってから抗議デモは収まっていた。香港では依然として居住者ではない外国人の入国禁止、公共の場における8人以上の集会禁止などの規制が設けられているが、それでも経済活動は再開し、ほとんどの市民が通常業務に戻っている。繁華街や商店街は朝から人でごった返している。

 そろそろ抗議デモがカムバックするのではないか。

 そんな雰囲気や憶測が漂っていた。中国共産党の権力を香港で誇示する象徴である中連弁、そしてその付近で何かに備えるかのように緊張した面持ちで準備を進める香港治安警察を眺めながら、「何かが起こる」、「抗議デモや市民と警察の武力衝突が復活する」、筆者はそう確信した。