ロイターは数日にわたり、同県川崎市宮前区にある同病院の救急救命センターを取材、新型コロナ患者の治療にあたる専門チームに密着した。

 同チームで働く医師や看護師たちは、時には防護服に身を固め、人生が絶望へと暗転しかねない患者の治療に格闘している。緊急事態宣言が徐々に解除され、病院の外では通常の生活が戻りつつあるが、取材から見えてきた病院の姿は異なる世界だった。

焦点:「解除の日」遠い医療現場、聖マリアンナ病院の葛藤
救命救急センター内の医療スタッフはチームになって働く。5月4日、神奈川県川崎市で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

 未曽有のパンデミック(世界的な大流行)から人々を守るという強い使命感とともに、彼らには残酷なまでに希望を奪い取るウイルスとこの先も数カ月にわたって戦わなくてはならない、という諦めのような思いも感じられた。異常な日々が常態化する中、医療スタッフの1人は、生と死が予測できたコロナ前の日常をほとんど思い出せない、と語った。

 コロナ禍を封じる最後の砦である医療現場では、終息の兆しが見えない現実が今もなお続いている。

「我々が逃げたら、誰がやるのか」

 各種のデータを見る限り、日本は他の多くの国より、このパンデミックにうまく対応してきた。他国のような感染者の急増はみられず、4月中旬以降は新規感染者が減少傾向にある。これまでに確認された感染者は1万6000人超。世界で30万人近くが亡くなる中、死者は777人にとどまっている。

 4000人近い乗客を乗せて横浜港に停泊中、集団感染を起こしたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。その患者を率先して受け入れたのは聖マリアンナ病院だった。以来3カ月、同船を下船した乗客も含め、同病院は新型コロナ患者を積極的に治療してきた。特にICU(集中治療室)に収容した重症者と中症者の数は、国内の病院では最多規模の約40人に達している。

 緊急を要する重症者は駐車場に設置したテントで気管挿管することもある。容体次第では、透明ビニールに囲まれた手術室に運び、気管切開を行う。ICUの中では、防護服に身を包んだ看護師が6人1組となり、何本ものチューブで様々な救命器具につながれた患者の姿勢を変える作業に当たる。

 疫病を防ぐとされる日本神話の妖怪「アマビエ」のイラストが貼られた院内では、日夜を問わず、新たな感染症と戦う緊張とあわただしさが交錯していた。