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8月24日 18時0分
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QE3で円高は進むか?〜為替レートは通貨の相対価格〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・8月13日のオンラインセミナー(チャット駆け込み寺)で、ドル円の先行きについてご質問を受けた際、「年末までには80円台まではやや円安方向に戻るのではないか」とお答えした。それに対して、「FRBがQE3を行うなら(QE3の可能性は高いとも述べた)、円高が進むのではないか。矛盾している。」という疑問を頂いた。

・セミナー時には時間が足りず、これに対してお答えできなかった。昨日(8月23日)のレポートでも説明したが、米FRBが追加金融緩和に踏み出す可能性は、更に高まったと考えている。為替市場では、8月22日に追加金融緩和期待の高まりで円高ドル安となっている。

・米FRBの金融緩和で米国金利が低下すれば、米日金利差が縮小し円高ドル安が進む。金融政策への思惑が最も影響する米日2年金利差とドル円の推移を重ねると、2008年以降の円高ドル安トレンドは、米日金利差で概ね説明できることが分かる(グラフ参照)。


・ただ、米日2年金利差がゼロに近づいた2010年後半から、ドル円は米日金利差と乖離する動きが一時的に見られるようになった。グラフで示しているが、まず、2010年夏場にFRBが追加金融緩和(QE2)を示唆してから、円高が大きく進んだ。そして、2012年2月半ばに、日銀が予想外に金融緩和を行った時に、米日金利差はあまり動かなかったが大きく円安に振れた。

・この2つの米国、日本の金融緩和の強化は、米日金利差の変動と異なる経路でドル円に影響を及ぼした。それは、中央銀行の金融緩和姿勢の変化が、各国の予想インフレ率に影響を及ぼし、ドル円を動かす経路である。将来インフレ率が上昇すると予想されれば、通貨価値が将来減価する期待が強まる。金融政策のスタンス変更でインフレ期待が変化し、それが為替レートに影響するメカニズムである。

・日銀による2012年2月14日のバレンタインデー金融緩和は、それまで日銀が頑なに拒否していた物価目標を掲げた点で、日銀が大きく変わったと当初は認識された。しかし、4月13日レポートなどで述べたが、日銀の金融緩和を強化する姿勢はトーンダウンし、ドル円は再び米国側の要因で主に動くようになり、再び70円台の円高水準が定着した。

・こうした状況が変らなければ、2010年にFRBがQE2に踏み切った時の連想で、今回のFRBのQE3への思惑から、円高が進む展開はありえるだろう。ただ、これ以上の円高といっても、どの程度進む余地があるか?まず、米日金利差の観点でいえば、両国の金利差はほぼなくなっており、縮小余地はほぼない。

・また、為替レートは通貨の相対価値である。FRBによるQE3を上回る規模で、日銀が金融緩和を強化すればどうなるか。米国ではインフレ率が目標水準付近で推移しているため、FRBがインフレ期待を高める政策には反対も大きい。一方、デフレという異常な環境にある日本は、最も強力な金融緩和を繰り出すことが理論上可能である。インフレ期待に働きかける金融緩和強化に対して、表立って反対する勢力はかなり少数派だろう。

・2010年と異なる点として、最近IMF(国際通貨基金)が、現在の通貨円が過大評価されている点を公式に表明していることが挙げられる。円高リスクに対して、日銀が実効性を持つ金融緩和強化を迫られる環境になっている。具体的には、将来のインフレ期待に働きかける金融緩和策であり、対症療法的な為替介入だけでは不十分である。実際に、2月の日銀によるサプライズ緩和で、日銀の金融政策の姿勢が変われば円安が進むという市場の認識は定着している。

・これらの環境変化を踏まえれば、今後FRBによる追加金融緩和があっても、2010年後半同様に「ドル安」が進むとは限らないだろう。もちろん政府や日銀が、円高を放任するならばこの見通しは外れることになる。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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