近年、金融犯罪は国内外問わず大きな社会問題となっているが、それがついに仮想世界にまで及んでいることを、ご存知だろうか?

 仮想世界とは、「セカンドライフ」などに代表される3Dオンラインワールドやオンラインゲームなど、インターネットなどの情報技術を利用して、人工的に作り上げられた“擬似的な世界”のことである。

 そこは、世界各地の人々が無限に広がる一つの世界に集まることから、様々な企業が独自のビジネスを展開する新たなチャンスの場として、注目されている。

 しかし、仮想世界における各国の法的管轄が依然として不明確なため、そこで横行する金融犯罪を取り締まるのは困難を極めており、多くの企業が金融犯罪というリスクに晒されているのが現状だ。

仮想世界でフィッシング詐欺や
ネズミ講が跋扈する深刻な現実

 では、果たして仮想世界でビジネスを展開する企業に忍び寄る「金融犯罪という現実」から、彼らがビジネスを守る術はあるのだろうか。

 警察庁サイバー犯罪対策の統計によれば、仮想世界で横行する犯罪検挙数は毎年右肩上がりで伸びており、2008年中のサイバー犯罪の検挙数は6321件と、わずか5年でおよそ3倍にまで増加しているのだ(04年の検挙数は2081件)。

 この数値は、警察の本格的な取り締まりと捜査力の向上を示すものであるが、一方で仮想世界で数多くの犯罪が横行していることを物語るものでもある。

 仮想世界で起きる代表的な金融犯罪には、「フィッシング詐欺」 (Phishing) と「HYIP」 (High-Yield Investment Program)がある。

 まず「フィッシング詐欺」とは、悪意を持った第三者が会員制ウェブサイトや合法的な企業を装い、ユーザーの個人情報を不正に取得して悪用することだ。

 具体的には、ユーザーアカウントの再登録や新規サービス移行に伴う登録内容の再入力などを口実に、本物のウェブサイトを装ったウェブサイトへのURLリンクを貼ったメールをユーザーへ送り、クレジットカードの会員番号、銀行預金口座を含む各種サービスのIDや暗証番号などを獲得するという手口だ。