中国 2020年6月8日

【緊急レポート】アフター・コロナへと移行する
中国・上海のいま

2006年に中国に移住し、蘇州、北京、広州、その後上海に約8年在住。情報誌の編集長を経て現在はフリーランスとして活躍する大橋史彦さん。今回は、上海でビジネスを展開する3人の日本人の証言を交え、新型コロナウイルス感染下の厳しい状況から復活しつつある上海をレポートします。

 年始は上海にいたが、その時にはまさかこんな事態になるとは思いもよらなかった。1月中旬に帰国すると、風景が一変した。新型コロナウイルスの感染が拡大し、2月に入ると上海でも厳しい管理体制が敷かれた。

 それでも上海では公共交通機関が止まることはなかったし、外出も禁止されず、厳密にはロックダウン(都市封鎖)ではなかった。にもかかわらず、外出する人が極端に少なかったのはなぜだろうか。それは「小区」の管理が厳しかったからだという。

「自粛警察」の比ではない末端の管理システム

 小区とはマンションや団地など集合住宅の一区画であり、ゲートの詰め所には、管理会社の警備員が24時間常駐している。コロナ禍では、その警備員が住民を厳しく監視したのだ。

 それには明確な基準があるわけでなく、運用は小区によってまちまちだったが、自分たちが所轄する小区から感染者を出してはならないというモチベーションが取り締まりを厳しくした。
 
 上海でセントラルキッチンを運営するゼロイチ・フード・ラボの藤岡久士CEOは、「日本の自粛警察の比じゃないのではないか」と当時を振り返る。

 藤岡氏は2月の春節(旧正月)明けに日本に一時帰国した。自宅マンションに戻ってくると、警備員から2週間の自宅待機を命じられた。当時はまだ日本での感染確認者の数は少なく、中国政府も日本からの入国者に対して隔離措置を取っていなかった。にもかかわらず警備員は、自分の判断でそれを求めてきたのだった。

 藤岡氏はなんとか期間を1週間に短縮してもらったが、エレベーターの利用も禁じられた。デリバリーで注文した商品は、小区内で指定された場所まで自分で取りに行かなければならなかったが、それさえ許されず、警備員に自宅まで持ってきてもらうしかなかった。

 「上から通達があり、下に降りていけばいくほど厳しくなっていく。若干の遊びがありながら、締めたり緩めたりして管理するのが中国のやり方であり、今回はそれが極端な形で機能した」と藤岡氏は指摘する。

 中国というとITによる監視のイメージが強いが、毛沢東の時代の市民が市民を監視する仕組みがいまでも残っているのだ。

 政府がアプリで人の健康状態や行動を管理する前から小区では独自の外出許可証が発行され、それがないと外出ができないだけでなく、小区によっては夜間の出入りまで禁止されたという。上海じゅう、あるいは全国の小区で一斉にそうした厳格な管理が行なわれたことで、中国は新型コロナの収束を実現させたのだ。

 そんな厳しかった上海も、5月に入ってからは警戒が緩んできている。交通機関やオフィスビルなど、公共性の高い場所ではマスクの着用が求められるが、多くの小区で検温の必要がなくなり、マスクをしていなくても咎められることがなくなった。街中でもマスクを着用している人は7割程度まで減っているという。
 
 かたや日本は、非常事態宣言こそ解除されたものの第二波へ備え恐る恐る生活しているといった感じだが、「中国人のように『ウイルスを抑え込めた』と思える人たちは強い」と藤岡氏はその違いを指摘する。

3月初旬、コロナ禍の影響について現地メディアから取材を受けるセントラルキッチン【写真提供/ゼロイチ・フード・ラボ】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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