衆議院の解散・総選挙は急ぐべきではない。

 来年の任期満了でもよいし、7月の参議院選挙と同日でもよい。

 野田佳彦首相は、①民主党の大敗、②消費税増税法案の凍結、③自らの早期退陣を恐れて、内心衆議院の解散には気が進まなかっただろう。

 だがこのところ、領土問題が突発し、強硬姿勢で臨めば支持率が急上昇して解散・総選挙もあながち不利ではないと迷い始めているのではないか。韓国の李明博大統領も竹島上陸を強行して、支持率が10%台から20%台へと10ポイントも上昇したという。

 自民党は参議院で問責決議案を提出するらしい。それが可決されれば参議院の審議・採決は全面的にストップする。特例公債法、衆議院の定数是正、原子力規制庁の同意人事などの重要案件が処理できなくなる。そうなったら政権は立ち往生するという戦法だ。

 そもそも首相が「近いうちに解散」と提示するのも変な話だが、それで納得する谷垣(禎一)自民党もかなり変で、「どっちもどっち」という印象である。一体、公然と衆議院の解散を法案成立の条件とすることなど論外であって、不見識と言われても仕方があるまい。

もし今秋に総選挙を行えばどうなるか

 さて、解散・総選挙を来年の夏以降まで先送りすべき理由はいくつかある。

 (1)ここで総選挙を実施しても政治の混迷は深まるばかりである。

 民主党の歴史的惨敗は必至。自民党が勝つと言っても、民主党に勝つだけで単独過半数にはほど遠い。

 第三極は大きく躍進するだろうが同床異夢。今のところそれを統合する人もいなければ、政権を自立するための原則も構想もない。

 おそらく、総選挙後は政権の枠組をめぐって長く不毛な混乱が続くだろう。